交流・異動させつつ人材を効果的に育て上げるには
コア人材の発掘と育成は日本企業にとって重要なテーマとなっているが、同社も中堅社員を対象にしたSLP(Strategic Leader Development Program)と課長以上の管理職を対象にした「ストレッチ」(Stretch)の2つの育成プログラムを用意している。
SLPは管理職の一歩手前ないしは管理職になりたての層を対象にした選抜型研修だ。年齢的にはSDPを卒業した30代前半から40歳ぐらいまでの層である。まずはラインの課長や部長、将来的にはトップマネジメントを目指すような人材の育成を目的に「参加者をグループごとに分けてテーマを与え、経営課題について議論しながら一つにまとめて発表する研修を行っている」(酒井部長)。
SLPが将来のトップマネジメントに必要な基礎的能力を養う研修であるとすれば、ストレッチは研修・配置・実践を繰り返しながら計画的に経営幹部を育成していくものだ。課長以上の管理職を対象に各事業グループの推薦を受けて選抜し「計画的な研修を受けさせると同時にチャレンジングな仕事に就けさせるという戦略的なローテーションによる育成を図っている」(酒井部長)。
次世代経営幹部の早期育成教育を実施している企業は多いが、部門間をまたがる異動や経営職に抜擢するなどの戦略的配置においては“カンパニーエゴ”の障壁に阻まれるケースも少なくない。
だが、同社の場合はストレッチの対象者になると、人事権は各社の社長から持ち株会社の大八木成男CEOに移ることになっている。
「優秀な社員であれば当然、それぞれの会社としても手放したくないという思いがあります。しかし、適材適所という観点から、将来トップマネジメント層を担ってほしいと期待する人であるストレッチに認定された人の人事権は各社の社長ではなくグループCEOが持つというルールにしています」(酒井部長)