OBによる若手のマンツーマン教育

高度専門職といっても技術職に限らない。事務系でも組織のフラット化により、部長の下にスタッフしかいない部門もある。とくに経営戦略部門のスタッフは事業グループ間の調整など重要な仕事を担っている。部長や課長に劣らぬ有能なスタッフを高度専門職として処遇することでモチベーションを高めようとの狙いもある。

高度専門職は主に課長職と同じ等級に位置づけ、独自の評価項目に沿って査定される。誰もが高度専門職になれるわけではなく、各事業会社ごとに一定の枠を設けている。もちろん高度専門職であってもライン管理職に就く可能性は十分にある。

人材の育成においてはもちろん経営幹部候補以外の研修にも力を入れている。製造業の根幹である現場力の強化を目指した「工場長教育プログラム」や「帝人テクノカレッジ」はその代表的なものだ。工場長教育プログラムは年間10日前後の研修を行う。

「工場長としての心構えに始まり、職場のコミュニケーションや職場の改善の方法、原価管理などのコスト管理や安全教育を徹底して行っています。メーカーにとって現場は命であり、現場力の強化は不可欠だと思っています」(酒井部長)

技能伝承という形で現場力の強化を目指しているのが「テクノカレッジ」だ。工場長の下の総合職と一般作業者のリーダーである主に30~40歳を対象に1年間の研修を行う。帝人在職中にその道の第一人者と呼ばれた管理職のOBを中心に「教授」を任命し、彼らがマンツーマンによる指導を行う。

参加者は年間60~80人。教授は30人。07年にスタートし、現在4期目を迎える。

「受講生は将来現場の中心となるリーダー候補です。卒業後、現場に戻り、学んだことを実践し12分に発揮できるかどうかが重要と考えています」(酒井部長)