中島重久堂の鉛筆削りとは、具体的にどのような切れ味なのだろうか。中島社長は西洋と日本の刀の違いを例に説明する。

「ドスンと押して切るような西洋刀(ドイツ製)に対して、日本刀(中島重久堂)はスッと引いて切るイメージ。そうすると、削った後の鉛筆の木肌がザラザラではなく、ツルツルと美しく整っています」

日本刀のような切れ味だという
筆者撮影
日本刀のような切れ味だという

OEM事業が成長の支えに

こうした刃の技術革新によって文具メーカー向けのOEM(編註:相手先のブランドで製品を製造すること)事業が急伸したほか、一般の鉛筆削り以外にも、化粧品メーカーのコスメペンシル用削りなどの開発オファーが増えたという。

この技術力をベースに、中島社長がさらに改良を加えたのが、二枚刃の鉛筆削りだ。開発のきっかけはOEM先からの要望で、完成までに約1年半を費やした。中島社長は回想する。

「片刃で削るのと比べて抵抗は2倍になるわけですから、その重さを感じさせないように、例えば、刃の長さや形、厚みなどを細かく調整するのが難しかったですね。二枚刃の利点は、鉛筆を早く削れること。スピードに文具メーカーがこだわっていて、叔父の代から相談は受けていたのですが、なかなか量産化できませんでした。私の代でようやく実現できたのです」

このような商品開発は、そう易々と他社は追随できない。これこそが中島重久堂の大きな強みであり、鉛筆削りの専業でもやっていける経営の礎になった。

二枚刃の鉛筆削り
筆者撮影
二枚刃の鉛筆削り

念願だった海外展開

もう一つ、中島社長の代になってから力を入れているのが、海外展開だ。

社長就任時から、日本の優れた製品を海外で販売したいという思いを抱いていたものの、中小企業基盤整備機構に相談したり、中国のアリババが運営する越境ECサービスに登録したりしても突破口を開けずにいた。そうした中でジェトロのセミナーに参加し、担当者に訴えたところ、紹介されたのが、ブランディングの専門家であるクレアツォーネ・草野信明代表だった。

草野氏は中島重久堂の鉛筆削りを見るなり、「美しい」と感嘆の声を上げ、この製品であれば海外マーケットでも通用すると確信した。そこで次に中島社長と会った時に、フランスの見本市「メゾン・エ・オブジェ・パリ」への出展を勧めたのである。2013年に中島重久堂は初出展し、鉛筆削りを実演したところ、切れ味などが高評価を受けた。その一つが「ペンシルフレーク」である。これは鉛筆の削りカスを指すのだが、まるで芸術作品のような美しさだとの反響があり、その後、2015年に出展した時からはこのような名称で定着している。

グッドデザイン賞を受賞した「TSUNAGO」
筆者撮影
グッドデザイン賞を受賞した「TSUNAGO」