「中国人留学生は100%スパイ」
こうした事件がSNSで取り上げられるたびに、韓国各地で中国人を排斥する動きが強まっていった。
韓国の主要都市を歩けば、目に飛び込んでくるものがある。「中国人留学生は100%潜在的スパイ」「中国人が押し寄せている。犯罪を持ち込んでいる」と書かれた横断幕だ。コリア・ヘラルドが昨年12月に報じた韓国各地の光景である。
中国を否定的に見る人の割合は、過去四半世紀ほどで倍以上に増えた。タイペイ・タイムズによると、2002年の31%から2008年には49%に上昇。ピュー・リサーチ・センターの2022年調査では80%にまで急伸し、ギャラップ・コリアの2025年調査でも72%と高止まりしている。
コリア・ヘラルドによると、横断幕は韓国全土に広がりつつある。韓国与党の「共に民主党」の李海瓚議員が昨年9月に委託した全国世論調査では、韓国人の68%がこうした横断幕を実際に目にしたことがあると回答した。
一方、目にした人の約80%が不快感を覚えたと答えており、保守を自認する層でも65%が同様の反応を示した。誤情報やヘイトスピーチを広めたり、他者を公然と名誉毀損したりする横断幕を規制すべきだとの回答は全体の70%を超えており、行きすぎた国籍差別には自重論も根強い。
反中感情を高めている3つの要因
韓国社会の対中感情は根が深く、タイペイ・タイムズが挙げる反中感情の主な要因は3つ存在する。
まず、一部の中国人観光客のマナー問題。そして、中国籍住民による不動産購入に伴う地価上昇や短期滞在者の国民健康保険利用といった制度上の軋轢。さらに、2017年の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備をめぐる中国の外交的・軍事的圧力だ。
なかでもTHAAD配備の影響は大きい。米政府系国際放送局のボイス・オブ・アメリカによると、韓国が北朝鮮の脅威に対抗してTHAAD配備を受け入れた2017年以降、中国が経済的な報復措置に踏み切ったことで両国関係は大きく悪化した。
これら3点とは別に、対立は歴史・文化の領域にも及ぶ。同局は、中国が高句麗や渤海といった朝鮮半島の古代王国を自国の歴史に編入しようとしてきたことが、韓国の反感の根底にあると報じている。中国のこうした行為は「東北工程」と呼ばれている。
火種は近年も絶えず、中国の国営メディアは、キムチの起源は中国にあると主張。2022年の北京冬季五輪の開会式でも韓服(韓国の伝統衣装)を着た女性が中国国旗を掲げて行進し、韓国側は自国文化の盗用だと猛反発した。
