ソウルで多発する抗議運動
過去最高額の中国マネーが韓国経済を潤す一方で、首都ソウルの中心部では、殺到する中国人観光客に対する抗議運動が広がっていた。
運動の発端は昨年6月、外国人観光客でにぎわう明洞(ミョンドン)での第1回抗議集会だ。主催者によれば、参加者数はそれ以来7〜8倍に増え、約1万人以上に達した。
弘大(ホンデ)にも、別グループによる抗議が広がっている。中国系住民が多い大林洞(テリムドン)では、抗議中に中国人住民が警察の目の前でデモ隊に瓶を投げつける事案も起きた。デモ自体は非暴力で行われているものの、衝突の火種が韓国各地でくすぶっている。
今年1月、約2000人が凍てつく繁華街・江南(カンナム)をデモ行進した。台湾英字日刊紙のタイペイ・タイムズが現場の模様を報じている。「CCPアウト(中国共産党は出て行け)」「韓国は韓国人のもの」。参加者の大半は学生だった。「滅共」と漢字で記した帽子を被り、「天滅中共(天が中国共産党を滅ぼす)」と書いた横断幕を掲げるなど、過激な主張も目立つ。
デモを主催した保守系青年運動団体「フリー・ユニバーシティ」のリーダー、パク・ジュンヨン氏は、ハンガーストライキを実施。氷点下の街頭で演説を終えた直後に倒れ、病院に搬送された。
学生が運動の先頭に立つ理由に、韓国特有の世代意識がある。多くの国では高齢層ほど中国に否定的だが、米シンクタンクのピュー・リサーチ・センターが2020年に14カ国を対象に行った調査で、若年層が高齢層より否定的だった唯一の国が韓国だった。若年層の80%が中国に否定的な印象を抱いている。
王宮で起きた「排泄騒動」
反中デモは差別的な側面をはらむ一方、否定的心情には一定の理由があるようだ。韓国各地で外国人観光客、とりわけ中国人観光客によるマナー違反が相次ぎ、そのたびにSNSで炎上していた。
昨年11月10日、ソウル・景福宮。70代の中国人観光客が、北門・神武門の石垣付近で排泄しているところを咎められた。韓国英字経済メディアのグローバル・エコノミック・タイムズは、朝鮮王朝の王宮であり国の指定史跡でもある景福宮での行為に、韓国世論が激しく反発したと報じている。
同紙などによると、済州島にある韓国最高峰・漢拏山(ハルラサン)の国立公園や龍頭海岸(ヨンモリ海岸)でも同様の迷惑行為が問題化している。漢拏山の公式サイトには「排泄したり大声で騒いだりする中国人観光客をどうにかできないのか」という訴えが投稿された。2024年夏には済州島で外国人の子どもが歩道で排泄する写真も怒りを買い、罰則の強化を求める声が相次いだ。
済州島では昨年4月、バスの車内で喫煙する外国人観光客の動画がSNSで拡散し、激しい批判を浴びた。コメント欄には「今すぐ強制送還して罰金を科せ。払わないなら航空券の購入を禁止しろ」といった書き込みが殺到したと、CNNが報じている。
こうした事態を受け、済州島は外国人観光客向けに多言語の行動ガイドラインを策定し、公表した。禁煙エリアでの喫煙や自然環境の損壊にはそれぞれ5万ウォン(約5500円)の罰金が科される。

