専門分野の講義資料を作らせてみると…
筆者も講義資料の作成にAIを使っているが、専門分野の講義資料をAIに作らせると、そのままでは全く使えない。例えば、プロジェクトマネジメントの講義資料をAIに作らせると、意外に抜け漏れが多く、逆に余計なことが含まれていることがほとんどだ。
そのため、抜け漏れを指摘し、不要な部分を削除するような指示を細かく繰り返して、やっと資料ができあがる。
そうした意味で、ある程度の専門性が要求される場面では、AIは使えるが、使っている人にその分野の専門知識が無ければ出力結果を評価できない。
前述の原則2の出力の検証ができないのだ。
そして、専門家が見れば、「あーこれはAIで適当にまとめたな」というのはすぐに分かる。
今のAIは、いわばポータルサイトのようなもので、広い範囲を薄くカバーしているが、少し専門的な分野になると深掘りできなくなる。
それでも、近い将来には、住まい探し、仕事探しなどの特定の領域で、これまでの生成AIとは違った、その領域の固有のデータを生かした専門領域のAI、昔でいうバーチカルサイトのようなバーチカルAIとでも言えるものが登場してくるだろう。
覚えている人はほとんどいないかもしれないが、2004年頃にもてはやされたWEB2.0の議論の中で提唱されていた「データは次世代のインテルインサイド Data is the Next Intel Inside」が再び注目されることになるだろう。
AIによる業務自動化はまだまだ
「最近は、AIエージェントで業務を自動化しました!」みたいなSNSの投稿も見かけるようになったが、おそらくその多くは個人の営業用アピールで、実態としてはまだまだAIエージェントによる業務の自動化が簡単にできるような状態ではない。
むしろ、AIによって業務の自動化をするのではなく、旧来のExcelのマクロやVBAをAIに書かせることで業務の効率化を図る、というのが現実的な解だろう。
こうした取り組みは、禁止されているITを勝手に使う「シャドーIT」とは区別されていて、許可されているITツールの範囲で(その多くはExcelのVBAやAccessだ)、許可されたAIを使って構築された「野良IT」であって、ルール違反ではない。そして、野良ITはAIによって劇的に作りやすくなった。また少し前なら、他人が書いたマクロやVBAを読み解くことはものすごくストレスがかかる仕事だったが、AIを使えば、簡単に読み解けるようにもなっている。
ただし、「AIによってシステムは誰でも作れるようになる」「AIによってシステム開発の仕事はなくなる」といった主張は正しくない。
なぜなら、システム開発において、AIが代替できるプログラムコーディングは、システム構築全体のせいぜい2割程度でしかなく、残りの8割は、システムのコンセプト検討、アーキテクチャ設計などの上流工程、関係者の合意形成や調整、保守、エンハンスなど人にしか行えない仕事だからだ。
もっと細かく言えば、データベースの設計や、各種コード体系の設計、UI/UXなどまだまだ人が関与しなければ品質が保証されない部分も多く残っている。
SNSでよく見かける、「AIでシステムを作った」はあくまで小さな個人的なシステムでしかないことに注意が必要だ。
将棋やプログラミングなど、すでにAIが人の能力を超えた分野もあるが、もっと広い範囲で人の能力を超えるのにはもう少し時間がかかるだろう。
もしかすると分野によっては、「もう少し」が数カ月かもしれないが、それでも、結局はAIは使う人による、という状態はもうしばらくは続くだろう。


