米国を襲った大干ばつの影響

米国産牛肉の輸入が急減した理由として、急激な円安の影響など様々な要因がありますが、近年米国で発生した干ばつの影響が最大の要因だと考えられます。

2020年から2022年にかけて、米国の主要な肉牛生産地帯を大干ばつが襲いました。牧草や乾草の確保が難しくなり、肉牛生産者は繁殖用の雌牛を減らしました。

繁殖雌牛が減れば、生まれる子牛も少なくなります。数年後に出荷される際の頭数も減り、結果的に牛肉生産量が減少してしまいました。

鶏や豚であれば、比較的短いサイクルで生産量を増やすことができます。しかし牛はそうではありません。牛群が一度縮小すると、供給が回復するまでには数年単位の時間がかかります。

その上、メキシコで発生した「新大陸スクリューワーム(※)」の影響により、米国向けの生きた牛の輸入に制限がかかっています。メキシコからの生体牛輸入が滞れば、米国内の需給はさらに引き締まり、輸出に回らなくなってしまいます。

(※)新大陸スクリューワーム:いわゆる「人喰いバエ」。ラセンウジバエの幼虫で、動物の皮下に入り込み、深刻な損傷を引き起こす。畜産にとっては重大な問題ですが、牛肉の食の安全性とは無関係です。

牛タン、ハラミも品薄高

米国において、牛の頭数が減ったぶん、生体牛の価格が高騰しました。それに連動して牛肉自体の卸売価格も上昇しています。

ただ、卸売価格の上昇幅が、生体牛価格の上昇幅に追いつかず、その結果、牛を買って処理し、牛肉として販売する牛肉加工業者、いわゆるパッカーの採算が悪化しました。

2025年には牛1頭を処理するごとに200ドル台の赤字が出る週もあったほどです。

パッカーは損失を抑えるため、工場の稼働率を下げましたが、その後も生体牛価格は高値を更新し続け、結果として、パッカーのマージンはさらに悪化していきました。

そうした中で、一部の工場では閉鎖や稼働シフトの削減が行われました。

閉鎖された工場の中には、対日輸出の基幹工場もあったため、その影響は牛肉だけでなくハラミ、サガリ、牛タンといった牛バラエティーミートの供給にも影響しました。

牛タンやハラミといえば焼肉店や居酒屋でも人気の部位ですが、その牛タンやハラミの価格が急に高くなったのには、こうした米国側の供給事情があったのです。