日本でのパート労働者の扱い

パートタイム労働者とは、一般の労働者よりも労働時間が短い人を指します。本来は決して、待遇や給与水準が低い労働者という意味ではありません。

しかし、日本ではパートタイム労働者の給与水準が極端に低く、顧客や雇主からすれば「価値が低い」と見なされる仕事を引き受ける存在として増えてきました。

労働力の買い手である雇主が、その人の仕事にどれだけの価値を認めているのかを表すのが給与です。具体的に、パートタイム労働者の給与水準が一般労働者と比べてどれだけ低いのかを確認すると歴然とした差があるのです。

年収比較だと労働時間の短いパートタイム労働者の水準が低くなるのは当然ですので、平均時給に着目して就業形態別の賃金差を確認すると、それがよくわかります。

図表5の通り、一般労働者とパートタイム労働者の平均時給には大きな差があります。

さらに、図の「就業形態計」の折れ線グラフからもわかるように、日本の平均時給も、1997年をひとつの山に、その後2010年代半ばまで減少してきました。近年は上昇傾向に転じているものの、2024年になってやっと当時のピーク値を上回った程度です。

そもそも日本の労働者は時間あたりで見ても、給与水準が低下していたのです。

最低賃金の引き上げ等もあり、パートタイム労働者の平均時給は上昇傾向が続いてはいますが、2024年でも一般労働者の半分に満たない水準です。「同一労働同一賃金」といわれてずいぶん経ち、徐々に改善されてはいますが、日本ではこのように働き方によって明らかな待遇の違いがあるのです。

賃金が低いということは、雇主や顧客からすれば「価値が低い」と見なされているという意味でもあります。

端的に書くと、パートタイム労働者の増加は、それだけ日本で、価値が低いとされる仕事が増えてきたことを表しているのです。

対価が低いうえにカスハラ対応まで…

ところが、実はパートタイム労働者の多いオランダやスイスでは、働き方による時給差はほとんどありません。

書影
小川真由『経済の現場から統計データで見るインフレ日本の安い賃金 誰かの犠牲に支えられた「サービス過剰」を終わらせよう』(日経BP)

図表6を見てください。フルタイム労働者に対するパートタイム労働者の時給比率を国際比較すると、日本だけが極端に低いことがわかります。欧州諸国と日本とでは、パートタイム労働者への対価がこんなにも違うのです!

製造業でも、仕上げ作業や袋詰めなどの定型的な作業ほどパートタイム労働者が多いです。中には神技職人のような方もいるのですが、時給水準は一般社員と比べて歴然とした差があります。

対価の低い仕事が増えるとそれだけで時給全体の平均値が下がりますが、さらに一般労働者に対しても「安価な労働者への置き換え」という圧力がかかります。このような傾向はベンチマーク効果とも呼ばれます。

しかも、なぜか対価の低い仕事ほど、かえって求められる基準が厳しい傾向があるのも日本の特徴です。日本では仕事の対価が低いだけでなく、カスハラなど、労働者にとっての様々なストレスがあるわけですから、労働者のやる気が出なくなるのも道理です。

安いモノやサービスほど、大切に扱われませんね。働く人も「いつでも代わりの利く存在」としてぞんざいに扱われ、さらに雇主や顧客から厳しい目で見られていたら、モチベーションが下がりフラストレーションも溜まります。

もちろん、安くて良いものを提供しようとする努力を否定するわけではありません。ただ、「売り手側が犠牲になってでも、安くて良いモノやサービスを提供する」という考えが、非合理的なほど浸透してしまっているのではないか。読者の皆さんにも、一度、そう疑ってみてほしいのです。

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