考え続ける人ほど答えが出ない

難しい問題に直面したとき、机にかじりつき何時間も考え続けたけれど、良いアイデアは全く浮かんでこない……。

一方で、一度すっかり諦めて散歩に出かけたり、お風呂に入ってリラックスしたりと、全く別のことをしているときに、まるで天啓のように、突然「あ!」と解決策がひらめくことがあります。

古代ギリシャの科学者アルキメデスが風呂に入っているとき、浮力の原理を発見して「エウレカ!(わかった!)」と叫んだという有名な逸話もありますよね。

実はこの「ひらめき」、単なる偶然や幸運などではありません。脳科学や心理学などの研究によって、科学的に説明がつく現象なのです。

その鍵を握るのが、「無意識思考理論(Unconscious Thought Theory)」です。

これは、ラドバウド大学のダイクスターハウスらが提唱した理論で、「複雑で難しい問題ほど、意識的に考え続けるよりも、一度その問題から離れて無意識に思考を任せた方が、質の高い結論に至りやすい」というものです。

複雑な問題ほど無意識に任せる

彼らは、被験者に、自動車やアパートなど、異なる数の属性(特徴)を持つ選択肢を提示し、次の3つのグループに分けて意思決定を行わせました。

①即時意思決定:考える時間を与えずに即座に選択するグループ
②意識的思考:熟慮してから選択するグループ
③無意識思考:注意をそらすための別の作業に取り組ませてから選択するグループ

結果は次のようになりました。

・単純な課題の場合:即時意思決定グループと意識的思考グループが、無意識思考グループよりも良い選択をする傾向が見られました。
・複雑な課題の場合:無意識思考グループが、意識的思考グループよりも、より良い選択をするという結果が得られました。

すなわち、複雑な意思決定においては、一度情報を得た後に意識を別のことに向ける(寝かせる)ことで、より質の高い判断ができる可能性が示唆されました。

この実験は、複雑な問題解決や意思決定において、意識的な思考よりも無意識的な処理が優れている場合があることを示し、後の研究に大きな影響を与えました。

私たちの脳が、意識的に一度に処理できる情報量には限りがあります。しかし、無意識は、私たちが寝ている間や他のことをしている間も情報を処理してくれている可能性があるのです。

脳内のイメージ
写真=iStock.com/Urupong
※写真はイメージです

この無意識の働きを脳科学の観点から支えているのが、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN:Default Mode Network)」の存在です。

DMNとは、私たちがぼーっとしているときや、リラックスしているときに活発になる脳の領域のことです。

このDMNが、あなたの頭の中にあるバラバラの知識や記憶をランダムに結びつけ、新しい意味のあるつながり、すなわち「ひらめき」を生み出していると考えられています。

私も何かアイデアを考えているとき、仕事から離れているときにふと良いアイデアを思いつき、あわててスマートフォンでメモを取る、ということがよくあります。

そして、この「寝かせる」という無意識思考を積極的に活用し、時間の節約を試みています。