悲しむ暇もなかった母親の葬儀前準備

私の母が亡くなったときの話を少し。亡くなってからの数日間は、本当に慌ただしくて、悲しむ余裕なんてありませんでした。近親者への連絡、死亡診断書の受け取り、葬儀社の手配、遺体の搬送、退院手続き……とにかくやることが次々に出てきます。

長尾義弘『老後不安は「思い込み」が9割』(青春新書インテリジェンス)
長尾義弘『老後不安は「思い込み」が9割』(青春新書インテリジェンス)

葬儀社が決まれば、今度は打ち合わせ。遺影の写真はどうするか、死装束はどうするか、宗派の確認、僧侶への連絡。お布施、お車代、御膳料の準備。初七日の段取りまで、ほぼ1~2日で決めていきます。気持ちは追いついていないのに、現実は待ってくれません。

葬儀が終わると、今度は役所の手続きです。戸籍謄本や住民票の除票を取り、必要な届けを出します。世帯主が亡くなっていれば世帯主変更届。年金受給者なら年金の停止手続き。医療保険や介護保険の資格喪失届もあります。

さらに、生命保険の請求、銀行口座の解約、電気・ガス・水道・新聞・インターネット・携帯電話・クレジットカードなどの解約や名義変更。母の場合は、生命保険や有価証券はなく、銀行口座とクレジットカードくらいでした。それでも十分大変でした。しかも田舎での作業なので、滞在できる日数が限られています。その間にできるだけ終わらせなければなりません。

元気なうちに遺品の「生前整理」を

また、手続きには期限があるものもあります。年金の停止は10日以内、介護保険の資格喪失は14日以内など、意外とタイトです。不動産や複雑な相続が絡めば、さらに大変になるでしょう。そして忘れてはいけないのが遺品整理。これが本当に骨が折れます。だからこそ、「生前整理」は元気なうちにやっておいたほうがいい、と心から思います。

この死後事務の問題は、いま行政の中でも大きなテーマになっています。たとえば横須賀市では、「地域終身サポート隊」という取り組みがあり、終活の支援や身元引受人の紹介などを行っています。

ひとり暮らしの高齢者が増えるなかで、「亡くなった後をどう支えるか」は社会全体の課題です。他の自治体でもさまざまな取り組みが始まっています。死の話は重い。でも、準備の話は前向きです。きちんと整えておけば、残される人の負担はぐっと減ります。そして何より、自分自身が安心できます。

老後の不安の多くは、「よくわからないから怖い」ものです。死後事務も同じです。知って、準備しておく。それだけで、不安はかなり小さくなります。死は避けられません。でも、「どう迎えるか」は選ぶことができるのです。

杖を持つ老人
写真=iStock.com/DMP
※写真はイメージです
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