本当に頭のいい子供を育てるには何をすればいいか。昔ばなし研究者の沼賀美奈子さんは「他人の子と比較して成果だけを見て焦るという、親の不安は子どもに伝わってしまう。そんな比較が苦しいときの処方箋として、おすすめの昔ばなしがある」という――。

※本稿は、沼賀美奈子『昔ばなしの魔法』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

供に読み聞かせをするおばあちゃん
写真=iStock.com/recep-bg
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「完璧な親」の呪いから解放される

現代の子育ては、「やることリスト」が無限です。英語、プログラミング、体操、音楽、そして受験対策。

情報を集めれば集めるほど「これも必要かも」「あれも遅れているかも」が増えていきます。

でも、親を一番苦しめているのは、やることの多さではありません。

実は「ちゃんとしなきゃ」「私がやらなきゃ」という、目に見えない責任感。

それが、親の心を一番重くしているのです。

子育てで一番重い荷物は、実はこの「責任」なのだと思います。

しかも厄介なのは、それが愛情から生まれていることです。

わが子を守りたい。

困った顔を見たくない。

できるだけ楽に生きてほしい。

そう思うからこそ、親は全部を背負い込みやすい。

でも、ここで一度、思い出してほしいのです。

本来、子育ては親一人の仕事ではありませんでした。

昔は、祖父母がいて、近所の大人がいて、先生がいて、みんなで子どもを育てる共同体がありました。親が日々の暮らしを回し、その周りの大人たちが、少し引いた場所から子どもを見守っていたのです。多様なものの見方が身につく環境があったのです。

現代では、その役割の一部を、先生や保育者、図書館の司書さん、ボランティアのお話会の方々が担っています。

子どもは、親一人の価値観だけで育つのではありません。

いろいろな大人のまなざしに触れながら、

「世界には自分を迎えてくれる場所がいくつもある」

と、知っていきます。

昔ばなしは、その失われかけた共同体の一部を、家の中に取り戻してくれます。

昔ばなしには、何百年も語り継がれてきた人間の知恵が染み込んでいます。

親が全部を説明しなくてもいい。

親が全部を教え込まなくてもいい。

昔ばなしが、子どもの心に必要なことを、少しずつ手渡してくれるからです。