※本稿は、沼賀美奈子『昔ばなしの魔法』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
「完璧な親」の呪いから解放される
現代の子育ては、「やることリスト」が無限です。英語、プログラミング、体操、音楽、そして受験対策。
情報を集めれば集めるほど「これも必要かも」「あれも遅れているかも」が増えていきます。
でも、親を一番苦しめているのは、やることの多さではありません。
実は「ちゃんとしなきゃ」「私がやらなきゃ」という、目に見えない責任感。
それが、親の心を一番重くしているのです。
子育てで一番重い荷物は、実はこの「責任」なのだと思います。
しかも厄介なのは、それが愛情から生まれていることです。
わが子を守りたい。
困った顔を見たくない。
できるだけ楽に生きてほしい。
そう思うからこそ、親は全部を背負い込みやすい。
でも、ここで一度、思い出してほしいのです。
本来、子育ては親一人の仕事ではありませんでした。
昔は、祖父母がいて、近所の大人がいて、先生がいて、みんなで子どもを育てる共同体がありました。親が日々の暮らしを回し、その周りの大人たちが、少し引いた場所から子どもを見守っていたのです。多様なものの見方が身につく環境があったのです。
現代では、その役割の一部を、先生や保育者、図書館の司書さん、ボランティアのお話会の方々が担っています。
子どもは、親一人の価値観だけで育つのではありません。
いろいろな大人のまなざしに触れながら、
「世界には自分を迎えてくれる場所がいくつもある」
と、知っていきます。
昔ばなしは、その失われかけた共同体の一部を、家の中に取り戻してくれます。
昔ばなしには、何百年も語り継がれてきた人間の知恵が染み込んでいます。
親が全部を説明しなくてもいい。
親が全部を教え込まなくてもいい。
昔ばなしが、子どもの心に必要なことを、少しずつ手渡してくれるからです。

