かなり荒っぽい計算になるが、現行の寄付者約1000万人が10万円ずつ寄付すると、総額は実績値に近い約1兆円の水準となる。だが、実際には7割強の世帯が年収700万円以下だから、同数の寄付者の年収を中央値の410万円(寄付額約4万3000円)として計算すれば約4300億円となり、寄付総額は3分の1程度に収まってしまう。

もっとも、寄付者数1086万人は住民税の納税義務者約5715万人の約19%にしかすぎないので、今後の伸びしろはずいぶん大きい。一時的に寄付金総額は減っても、ふるさと納税への理解が深まり寄付者の絶対数が増えれば、市場全体は再び活性化していくに違いない。

総務省は、27年から「193万円」を上限とする定額制を導入すると発表したが、実際に対象となるのは年収1億円以上の超高所得者だけ。これでは何の是正策にもならず、庶民の怨嗟の声を高めるだけで、やらない方がまし。どうして、そんなに及び腰なのか、理解に苦しむ。

仮に定額制の上限を10万円程度にすれば、現在抱えている懸案の多くを解消できる可能性が広がってくる。

仲介サイト事業者の手数料是正は必須

次に、質的側面。ポイントは、手数料の是正だ。

寄付金の使途を24年度実績でみると、5割程度が自治体に入り、約3割が返礼品の調達費、7%程度が送付費にあてられ、20%強が地域とは無縁の中央の仲介サイト事業者に支払われている。その額は2259億円の巨費におよび、このうち1379億円が手数料だった。

林総務相は5月12日、「手数料が高額。縮減を図る必要がある」と言明。総務省は、仲介サイト事業者に対し、自治体が負担している手数料を引き下げるよう要請、8月末までに対応方針を回答するよう求めた。

だが、ビジネスチャンスの確保に血道をあげる仲介サイト事業者が「はい、わかりました」と素直に応じるとは思えない。強制力のない「お願い」に過ぎないからだ。

ふるさと納税を「官製ネット通販」に変質させ巨大市場を作り出したのは、仲介サイト事業者であることは疑いない。ふるさと納税を身近な制度と気づかせ多くの利用者に利便をもたらした功績はあるが、反面、利用者に本来の趣旨とは無縁の返礼品目当ての寄付意識を植え付け、さまざまな弊害も生み出してしまった事実は罪深い。しかも、寄付をビジネスととらえて、多額の公金を事実上かすめとっている。

仲介サイト事業者にメスを入れるのは必然だが、民間事業者の手数料を法的に規定するのは現実的ではない。さりとて、現状のまま放置していては、ふるさと納税のゆがみを適正化することは難しい。

自治体を経由して間接規制で実効

では、どうするか。

まず考えられる選択肢は、自治体を縛る方策だろう。

総務省は25年10月から、「ポイントを付与するポータルサイトを通じてふるさと納税を募集することを認めない」とするルールを導入した。ターゲットは、自社サイトでのポイント付与を呼び水に集客して一気にシェアトップの座に躍り出た楽天だった。新ルールの効果はてきめんで、ある自治体のふるさと納税担当者は「楽天経由の寄付金の受け入れは明らかに減った」と言う。