全国的に山城の整備は進んでいるのに

近年、山上にありながら整備が進んでいる城は少なくない。たとえば津和野城(島根県津和野町)は、石垣上もその周囲も、多くの樹木が伐採され、灌木や草も除去されている。だから山麓からも石垣を望むことができ、城跡は歩きやすく、構造を把握してかつての雄姿を想像しやすい。樹木の侵食から石垣が守られていることはいうまでもない。

「天空の城」として有名な竹田城(兵庫県朝来市)、樹木の伐採が津和野城よりさらに進んでいる。そもそも山上の樹木が除去されて石垣がむき出しになっていたから、雲海に浮かぶ姿が注目されたのだ。

竹田城跡
竹田城跡(写真=Wae35244/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

安土城も現役のころは、すべての石垣上に建物が並び、樹木はかなり少なかったはずだ。それに信長は、大手道の正面に天守がそびえ立つように景観を構築するなど、見え方を強く意識していた。安土城は信長の権威と権力を示す「見せるための」城でもあったのだ。

そのことを考えても、草木を除去して石垣を露出させ、石垣の「見える化」を進めていくことが、信長のねらいを顕在化させつつ、訪れた人の満足度を高め、史跡の保存にも利するはずである。どうしてそれをしないのか。

城址の所有者に問い合わせてみると…

安土城跡は現在、滋賀県が管理団体ではあるが、宗教法人総見寺の私有地である。この寺は信長が築城と同時に、みずからの菩提寺として城内に築き、安土城が廃城になったのちも信長の菩提寺として存続してきた。

そうであるなら、信長が築いたこの記念碑的な城郭にもっと整備を行き届かせ、より魅力的に見せ、歩ける範囲を広げ、同時に遺構の保存を図っていってほしいと願う。

安土城跡では令和5年(2013)度から「令和の大調査」と銘打った発掘調査が、滋賀県を主体に進められている。県は「特別史跡安土城跡整備基本計画」も立てている。ところが城跡の所有者である総見寺が、調査や整備にあまり積極的ではない、という声が聞こえてくる。

総見寺に聞くと、次のような回答だった。

「国の特別史跡なので勝手なことはできません。安土城址は寺の所有地ではありますが、柱1本立てるにも国、県の許可を得る必要があります。整備しないといけないとは思っていますが、国の許可が要り、簡単なことではありません」