「なるほど」と思える原因があった
自動車による交通事故の原因については警察発表では安全不確認、脇見運転、動静不注視、漫然運転といった項目に分けられてしまう。しかし、原因ではあるけれど、真因とは言いがたい。自動車でも自転車でも電動キックボードでも、原因は運転している人間だ。人間の事故直前の心のありようが交通事故に結びついている。
今回、わたしは交通事故を減らした自動車保険の本を書く際、事故を経験した人たちに「事故の真因とは何ですか?」と質問して歩いた。以下はそのなかで、「なるほど」と納得できることを教えてくれたひとりの女性の話である。
北川涼子(仮名)さんは50代の女性である。浜松市で生まれ、豊田市に嫁ぎ、そこで子どもを産み育てた。子どもたちは成人し、今はご主人とふたりで暮らしている。仕事は公務員だ。彼女は2度、交通事故を経験している。
1度目は4年前だった。バックしてきた車に当てられてしまった。2度目は一昨年の夕方のことで、交差点で出合い頭にぶつかってしまった。ただ、彼女は交差点に入る前に一時停止をしていなかった。どちらの事故も軽微な事故ではあったが、その体験を経て、彼女は行動を変容した。それは、事故を起こさないためには生活していくうえでの考え方と行動を変えなくてはならないと思ったからだ。
警察や損保会社の交通事故の資料を見ると、そこには自動車事故の「原因」が列挙してある。先に挙げたように安全不確認、脇見運転、動静不注視、漫然運転……。いずれも安全運転義務違反に該当する。安全の不確認は交通事故の原因だ。しかし、真因ではない。真因とは問題の根本的な原因だ。
免許返納ができない地方の事情
北川さんは交通事故の真因を教えてくれた。
北川さんは交通事故の話を微笑みを浮かべながら話してくれた。余裕のある人なのである。「私は図書館司書として働いていて、通勤には軽自動車を使っています。うちは夫婦で1台ずつ持っています。田舎はもう車がないと不便です。ふるさとでも事情は同じ。おそらく東京とか大阪以外は車がなければ仕事もできないし、病院へ行くこともできないと思います。車のない生活は考えられません」
日本の都市圏以外では自分が乗る車がなければ生活できない。高齢になって免許を返納してしまうと、生活することができないのである。仮に自動運転バスが実現したとしても、地方では利用料が安くなければ利用できないだろう。
利用料を安くするためには自動運転車両はバスではなく軽自動車が望ましい。簡単に操作できる自動運転の軽自動車を開発して普及させることはできないのだろうか。利用者はバスよりも自分が慣れている軽自動車であればいざという時に運転することができる。軽自動車の自動運転乗り合いカーの実現が地方の交通を変える。そうわたし自身は考える。
話はズレたけれど、北川さんの最初の交通事故とドラレコ型のテレマティクス保険の導入について、である。


