月額1980円のプランもあったが…
つまり、最初の3カ月こそ月額980円で済むが、4カ月目からは通常の月額2600円が請求され、それが12カ月目まで強制的に続く。途中でサービスを見なくなったからといって、解約することはできなかった(6月18日現在は解約可能となった)。
1年間の契約期間内に解約しようとしても、残りの月数を一括、あるいは毎月支払い続ける義務が生じる。結果として、ユーザーが最終的に支払わなければならない総額は最低でも2万6340円にのぼるからである。
一方で、全コンテンツ対応の「DAZNスタンダード」にも最初の3カ月が月額1980円になるキャンペーンが用意されていた。こちらは「月間プラン」を選択できるため、W杯期間を含む2カ月だけ契約して解約すれば、総額3960円で済む。
1年縛りはよく見なければ分からない
DAZNのプラン選択画面では、このスタンダードの「1980円」と、サッカーの「980円」が並べられていた。予備知識のないユーザーの目には、当然のように「サッカープランの方が安くてお得」と映る。肝心の「年間プラン(12カ月の縛り)であること」や「途中解約不可」という文言は、スマートフォンの画面をスクロールしなければ見えづらい場所や、極めて小さな文字でしか記載されていなかった。
「980円で見られるなら得だと思い、年間契約と知らずに申し込んでしまった」
「W杯が終わったらやめるつもりだったのに、2万6000円の出費が確定して絶望している」
カスタマーサポートに「誤解して契約した」と訴えても、システム上、また規約上解約はできないと突っぱねられたという報告が相次いだ。ネット上では「2万6000円が消える新手の詐欺」とまで形容される事態に発展したのである。
一部の人からは「画面をよく読めば年間プランと明記されている。不注意なユーザーの自己責任であり、詐欺と呼ぶのはお門違いだ」という冷ややかな声もある。しかし、この画面設計そのものが、現代のデジタルマーケティングにおける最大の闇である「ダークパターン」の典型例であることは疑いようがない。
消費者を惑わす「ダークパターン」
「ダークパターン」とは、Webサイトやアプリのユーザーインターフェース(UI)を巧妙に設計し、消費者が無意識のうちに自分にとって不利な、あるいは事業者に有利な行動(契約や購入、個人情報の提供など)を取るように誘導する設計手法のことだ。
2010年にイギリスのUXデザイナー(ユーザーエクスペリエンスの専門家)、ハリー・ブリヌル(Harry Brignull)が提唱した概念であり、近年、各国の消費者保護当局が規制に乗り出している。
ダークパターンにはいくつかの典型的な手法がある。今回のDAZNのケースに当てはまるのは、主に以下の3つだ。
①「隠蔽(Misdirection)」事業者にとって不都合な情報(年間契約の義務や途中解約不可の条件)を、目立たない色や小さな文字で配置し、ユーザーの目を意図的に逸らさせる。
②「視覚的ヒエラルキーの悪用」最も安価に見える「980円」という数字だけを巨大なフォントや目立つ色で強調し、「これは月単価ではなく、長期契約の罠である」という構造を視覚的に隠す。
③「おとり効果(Decoy Effect)」より高いプラン(1980円)を隣に並べることで、目的のプラン(980円)を過剰に「割安」だと誤認させる。


