理数系ができない
そんな安藤さんは小学校に上がると、授業中、静かに椅子に座っていられず、隣の子に話しかけたり、立って歩き回ったりするようになる。そのため、他の子たちは定期的に席替えがあったが、安藤さんだけは教卓の正面の席に固定された。
成長とともに落ち着いて座っていられるようにはなっていったが、今度は教科によって得意不得意が顕著になっていった。
「特に理数系が苦手でした。計算はできるのですが、文章問題になると全然理解できなくて。図形や照明問題もダメでした。勉強しようと思っても、イマイチ集中ができなかったように思います。今振り返ってみると、昔から人の指示が理解しにくくて、体育でも教師の指示がつかめず、他の人の動きを見て真似していました。そこまで目立っていたわけではないですが、自分だけ浮いていた感覚はありましたね。聞き間違えをすることもよくあります」
友達とはもっぱら、家の中でゲームをして遊んだ。
中学生になると、歴史が好きになり、歴史だけはテストの点数が良かった。高校生になると、突然洋楽にハマり、全教科の中で一番英語ができるようになった。その一方で、物理ではなかなか点数が取れず、留年しそうになったがギリギリ回避した。
そして卒業後は、地元の大学の人文学部の英文科に進学した。
崩れ去った「憧れのキャンパスライフ」
大学に進学すると安藤さんは、一人暮らしとアルバイトを始めた。
最初に選んだアルバイトは、スーパーの調理エリアで寿司を詰める簡単な仕事。だが、そこでは詰め方を何度も注意された。部屋に友達を呼んで徹夜でゲームをして遊んでいたところ、翌朝にシフトが入っていたことをすっかり忘れてしまい、心配したスーパーの上司がわざわざ家まで呼びに来てくれたこともあった。
結局、何度注意されてもうまく詰められず、いづらくなって3カ月で辞めた。
次のアルバイト先は焼肉屋だった。キッチンで働き始めた安藤さんを悩ませたのが、冒頭のエピソードだ。
安藤さんは、仕事をしながら人と話す、という本来平易なはずの行動ができない自分に気がついた。自分と他の人の働きぶりを比較して、他の人はできているのに、自分だけができないことばかりに目がいき、自分を責める。
「せめてミスなくこなせるように」とオーダーされたメニューのメモを取ると、間違いなくこなせるようになった。だが、話しかけられると手が止まる。作業に集中すると、会話が途切れる。
「どうやら僕は、脳内でリソースの奪い合いが起きるようで、会話と作業の“同時処理”ができないみたいなのです。些細なミスをすると、『またやってしまった』と自己嫌悪に陥り、それがさらに集中力を奪い、焦り、視野が狭くなり、優先順位がわからなくなりました」

