20分で沈んだ「スウェーデンの誇り」

ウェスト氏が最も愛する失敗の一つが、自身の活動の地でもあるスウェーデンの故事だ。

意気揚々と帆を張った、豪華な軍艦。処女航海で進んだ距離は、わずか1マイル(約1.6キロメートル)にも満たなかった。

1628年、スウェーデンの誇りであったヴァーサ号。港を出て20分で横倒しになり、あっけなく海の底へ沈んだ。船としては、とんでもない失敗である。

スミソニアン誌によると、原因は大砲を配置する砲列甲板が重すぎたこと。装甲船の設計経験の浅い者が設計したうえに、スウェーデン王のグスタフ2世アドルフが建造を急がせた。

当初は36門を搭載するよう設計されていたが、出航時には約2倍の64門が積まれていた。美しい装飾も、重量がかさみ不安定となる原因となった。

1961年に海底から引き揚げられて陸に戻ったヴァーサ号は、いまやまったく別の価値を帯びる至宝になっている。海原に沈んだことでむしろ、現代の歴史家にとって貴重なタイムカプセルとなったのだ。

2004年5月、船首から見た「ヴァーサ」号
2004年5月、船首から見たヴァーサ号(写真=Nick Lott/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

失敗博物館の真の意義

ヴァーサ号の失敗は、今では「ヴァーサ症候群」として経営学上の警句にもなっており、世界中のビジネススクールで定番のケーススタディとして教えられている。船の優雅さや火力を過度に重視し、船の基本性能である耐航性と安定性が軽視された経緯は、約400年経った現代の組織にも深い示唆を与える。

進水前のテストでは、すでに船の安定性に疑いの目が向けられていた。にもかかわらず、王の意向には逆らえず、誰も中止を進言できなかった。「失敗の多くは、創業者が周りの意見を聞かなかったことに起因する」というウェスト氏の指摘は、まさにこの構図に重なる。

このように失敗には多くの洞察の余地があり、必ずしも恥じたり、隠蔽されたり、忘れ去られたりするべきではない。未来を見越した価値のある挑戦や、後の視点から学びがある失敗などは、保存してこそ価値がある。

失敗博物館の意義は、まさに失敗の価値を世に広めることにある。