一番乗りでも勝てなかった教訓
技術が優秀であったり、市場に一番乗りしたりするだけでは、その後の競争に勝てない。こうした教訓を残したベータマックスを、失敗博物館は愛情を込めて「惜しくも届かず(So Close And Yet)」に分類している。
同博物館は、「ソニーはこの失敗から学んだ」とも言及。ソニーはその後、音楽業界と提携を結ぶことで、CDの普及に成功した。さらに、レコード会社を買収。レコードレーベルを傘下に擁し、家電だけでなくエンターテインメント分野でも存在感を放っている。
天下のゲームメーカー任天堂も、いくつかのハードウエアで失敗している。中でも家庭用ゲーム機のバーチャルボーイは、同社にとって大敗といって良い製品だった。
バーチャルボーイは1995年、世界初の3Dゲーム機として登場した。のぞき込むと左右の眼に別々のLED画面が表示され、擬似的に奥行きを感じられる仕組みだった。
ところが、消費者の反応は驚くほど冷ややかだった。頭に装着できない卓上型という奇妙な構造のため、テーブルに置いた本体ののぞき穴に前屈みで目の位置を合わせに行くしかない。
目玉だったはずの3Dグラフィックスまでもが期待外れと受け止められた、と失敗博物館は振り返る。画面を見続けると頭痛がするという不満も相次いだ。
そして発売から1年と経たずに、市場から静かに姿を消す。失敗博物館は、早すぎたのではないかとの指摘を込めて、「今はまだ未来ではない(The Future Is Not Now)」の失敗に分類している。
31年ぶりに復活した「迷ハード」
立体視に対応した携帯機のニンテンドー3DSを世に送り出したときでさえ、バーチャルボーイ用のゲームソフトの移植はあえて見送られた、と米ゲーム・エンタメメディアのIGNは指摘する。発売済みのゲームソフトをエミュレーターで蘇らせるだけで対応できたはずだが、需要はないと踏んだのだろう。
それが今年2月、ついに復活した。任天堂はバーチャルボーイをNintendo Switch 2/Nintendo Switch向けに移植。サブスクリプション「Nintendo Switch Online」に加入し、紙製のモデルを別途組み立てるか、9980円で別売されるハードウエアの「バーチャルボーイ Nintendo Classics」を接続することで立体感ある映像を楽しめる。
いったんは葬られたはずの失敗作が、30年の時を経て、専用ハードとしてふたたび日の目を見た格好だ。
世界中の喉を潤すコカ・コーラにも、隠したい失敗の過去がある。
1985年4月、同社は約1世紀にわたり守り抜いてきた門外不出のレシピを捨て、新たに調合したテイストの「ニュー・コーク」へ切り替えると発表した。米ニュース誌のタイムによると、当時のロベルト・ゴイズエタCEOは、新しい味は「より大胆」で「より丸みがある」、そして「より調和がとれた」ものになると誇らしげに語ったという。
だが、コカ・コーラの味を愛していた消費者は激しく反発した。会社には苦情の電話が殺到し、以前の味を取り戻そうと抗議グループまで結成された。消費者の猛反発と売り上げ不振を受け、同社はわずか79日で元のレシピへ立ち返った。

