※本稿は、尾谷昌則『その言葉の本当の思惑を見抜く 言語学』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
部下に好かれる上司は「配慮上手」
上司と部下のコミュニケーションは、年々難しくなっているといわれています。世代間のギャップがあるために、昭和世代の上司から見ると「最近の若者が何を考えているのか、よくわからん」と言いたくなるようですが、部下世代にもきっと言い分はあるでしょう。
例えば、プレゼンのコンペに応募しようとしている部下から見れば、次のうちどの上司が望ましいでしょうか。
上司B:山下くん、今年のコンペ、出すんだって。何か相談とかあったら、いつでも言ってね。
上司C:山下くん、今年のコンペ、出すんだって。これさ、去年のコンペで優勝したAさんのプレゼン資料なんだけど、参考になるかな~と思って(そっと資料を差し出す)。
相手の「他者に認めてもらいたい・よく思われたい・近づきたい」というポジティブ・フェイス(積極的な欲求)を満たしてあげる配慮行動を、「ポジティブ・ポライトネス・ストラテジー(PPS)」(ポジティブ・ポライトネス行動)といいます。その主な種類は以下の15つです。
部下に最も響く行動はどれか
上司Aのように、相手に「コンペに応募するつもりなのは知っている」「応援している」と伝えることは、PPS-1「相手に気づき、注意を向ける」というポジティブ・ポライトネス行動です。
ただ、応援の気持ちを口にするだけで、実際には何もやってくれてはいません。口では立派なことを言うけれど、行動が伴わない人というのはどこにでもいるものですが、ここではどこか他人事のように捉えている印象(=あまり積極的に関わる意思がないと伝える思惑)が感じられます。
上司Bは、PPS-1だけではなく、「相談とかあったら、いつでも言ってね」とより具体的に申し出て、相手の意向に沿う意思があることを積極的に提示しています。これはPPS -10「申し出・約束をする」に相当するポライトネス行動であり、上司Aよりもポジティブ・ポライトネスの度合いがやや濃いといえます。
しかし、それでも「待ち」の姿勢であることに変わりはありません。どうせ申し出るなら、「軽率に質問してくれていいからね」くらい言えばPPS-8「冗談を言う」も加味され、距離感がグッと縮まるのですが(余談ですが、最近は「軽率に」を悪い意味以外にもあえて冗談めかして使用する場合があるようです)。


