「人たらし上司」のデキる受け答え

さて、最後の上司Cは、PPS-1だけではなく、部下が必要としているものを察して、その資料を実際に持ってくるという行動を取っています。これはPPS-9「相手の欲求についての知識と気遣いを主張しまた仮定する」に相当するポライトネス行動なので、部下のポジティブ・フェイスが満たされる度合いがより大きくなります。

オフィスで書類を渡す
写真=iStock.com/Liudmila Chernetska
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これは、例えば恋人からプレゼントをもらった際に、プレゼント自体に喜ぶだけでなく、「自分が喜ぶプレゼントは何か」と相手が一生懸命に考えながら選んでくれたことに対しても嬉しく感じるのと同じ原理です。それだけ相手が自分に注意(のリソース)を割いてくれているという実感を持つことが、ポジティブ・フェイスを満たすことにつながります。

その意味では、「人たらし」といわれる人は、こういったポジティブ・ポライトネス行動が自然に、かつうまくできる人であるといえるでしょう。

「キモい」「キモくない」の境界線

PPS-1「相手に気づき、注意を向ける」の例をもう少し見ておきましょう。これが最も簡単で、毎日でも行えるポライトネス行動だからです。例えば、職場でのコミュニケーションであれば、次のような例が考えられます。

a.あれ、髪型を少し変えた?
b.〇〇さん、モンブランが好きって言ってたよね。オススメのお店はある?
c.〇〇さんは、いつも早めに出社して掃除してくれてるよね。
d.ちょっと寒くない? エアコンの温度、上げておくね。
e.おはよう!
f.……(ニコッ&会釈)。

aのような些細ささいな変化に気づいてあげる例は、髪型だけでなくメイクでも持ち物でも構いませんので、日常生活での応用はいくらでも利きます。ただし、さすがに男性から女性の些細な変化を毎日指摘してしまうと、「まるで監視されているようで、キモい」と言われてしまうでしょう。

ポジティブ・ポライトネス行動は相手に近づこうとする行動ですが、必要以上に距離を詰めすぎるのは考え物です。相手がストレスを感じないよう適度に距離を離しておいてあげる配慮(=ネガティブ・ポライトネス)も必要です。

距離感が重要だといえば簡単そうに聞こえますが、両ポライトネスのバランスを取るのが実は非常に難しいのです。コミュニケーションが上手な人は、この2つのポライトネス行動のバランスが絶妙な人だと言っても過言ではありません。