含みのある言葉の意味合いはどう解釈すればいいのか。言語学者の尾谷昌則氏は「会話における言葉の使い方には2つの側面がある。これを理解すれば、つい深読みしてしまうような言葉も冷静に観察・分析できるようになる」という――。

※本稿は、尾谷昌則『その言葉の本当の思惑を見抜く 言語学』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

心配し、考える男女のイメージ
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「そこの窓、開けられる?」の真意は何か

非常にわかりやすいベタな例ですが、皆さんなら次の疑問文をどう解釈するでしょうか。

そこの窓、開けられる?

文字通りの解釈であれば、窓が開くかどうかという「事実」を確認しているだけです。しかし、これが窓際に立っている人に対して向けられた発話であれば(=具体的な文脈に埋め込んで考えれば)、「もし開けることが可能な窓であれば、開けてほしい」という遠回しな「依頼」をしていると解釈されます。

これは英語でも同じです。“Can you open the window?”と言われれば、回答としては“Yes, I can.”(はい、可能ですよ)と、“Sure.”(もちろん)の2通りが想定されます。

前者は文字通りに能力の有無を質問されたと解釈した場合の回答で、後者は依頼されたと解釈した際の回答です。このように、言葉は「文字通りの意味」だけではなく、それ以上の意味を持ち得るのです。

そして、それこそが人と人とのコミュニケーションをややこしくしています。

「良い父・母になりそう」は褒め言葉か

もう1つ例を挙げておきましょう。

皆さんは、相手に言われた言葉で心がモヤモヤしたことはありませんか。もしくは、相手の真意がつかめずに困ったり、「どうもあの人と話すのは苦手だなぁ」と感じてしまったりしたことはないでしょうか。人付き合いをしていると、そういった瞬間は誰にでも訪れるものです。

例えば、若いときに異性から「〇〇さんって、良いお父さん(お母さん)になりそうだよね」と言われた経験のある人はいないでしょうか。もしくは、中学や高校の卒業アルバムなどで、クラスページにそんな印象を書かれているのを見かけた、でも構いません。何を隠そう、私は面と向かってこのように言われた経験が何度かあります。

こういう言葉って、どう解釈してよいのか悩みますよね。良い方に考えれば、「ひょっとして自分に気がある?」「そこまではいかなくても、かなり好印象を持ってくれている?」「もしかしてこの人は、私と結婚したときのことを考えている?」などと妄想が広がります。

ただ、悪い方に考えれば「恋人としては魅力がない」「生活感がにじみ出ている」「老けている」「他に褒めるところが見つからなかった」と言われているとも解釈できます。