発言の意味合いを決めるのは何か

結局、その発言が持つ意味合いは、誰が、いつ、どこで、誰に対して、どんな風に言っているのかによって違ってくるのです。言語学では、発言の解釈を左右するこのような情報のことを「文脈(コンテクスト)」と呼びます。

一方で、先の発言から共通する思惑をすくい上げることもできます。

婚活パーティーでの会話であれ、中学生同士の雑談であれ、同僚との会話であれ、相手を褒めるような発言をするからには、「あなたと良好な関係を築きたい」「ここでの会話を円滑に進めたい」といった思惑や意図があるのは間違いないでしょう。人間は、むやみに他者と争ったりケンカしたりしたいわけではありませんし、険悪なムードになるのを避けて友好的に協働することは、巡り巡って自分の利益にもなるからです。

その意味では、コミュニケーションを円滑に進めるための工夫として、相手の良さそうな部分を話題に取り上げて、良好なムードを演出することも会話では欠かせない戦略になるのです。

言葉の裏に潜む2種類の「思惑」

このように、会話における言葉の使い方には、2つの側面があります。

書影
尾谷昌則『その言葉の本当の思惑を見抜く 言語学』(サンマーク出版)

1つは、誰が、いつ、どこで、誰に、どんな風に言うかという文脈によって解釈が変わる思惑。先ほどの「良いお父さんになりそう」の例でいえば、婚活パーティーで言われるのと中学生の友人に言われるのとでは、込められた思惑がまるで違いましたよね。

もう1つは、互いのコミュニケーションをなるべく円滑に進めようとする、どんな文脈でも働いている共通の思惑です。文脈がどうであれ、相手を褒めるからには「あなたと良い関係でいたい」という思惑が根っこにあるという話がまさにそれです。

こういった点を加味しながら、実際のコミュニケーションの現場で言葉が持ちうる多様な解釈について考える分野が言語学の語用論なのです。

人間の会話がどんな法則の上に成り立っており、どんな思惑でその発話がなされるのかを理解できるようになれば、自分が何気なく行っている会話についても皆さん自身で冷静に観察・分析できるようになります。

どうぞ安心して、言葉に込められた「思惑」の世界をお楽しみください。

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