名前呼びで注意したいマナー

「名前を呼ぶ」という行為は、文化人類学的に考えれば、「人の身体からだに触れる」のと同じ行為だそうです。身体に触れてもよい相手はごく近しい人のみですよね。

書影
尾谷昌則『その言葉の本当の思惑を見抜く 言語学』(サンマーク出版)

それと同じで、dやeのような呼称が許されるのも、限られた近しい人間のみです。アメリカなどでは、職場の同僚同士でもdまでは広く許されるようですが、日本文化ではdの敷居はかなり高く、よほど親密にならなければ許されない雰囲気があります。

しかし、そういった空気を読めずに、中高年男性上司の中には職場の若い女性に対して、「○○ちゃん」呼びをする人が(令和のこの時代でも)まれにいるらしいです。相手を励ます際にそっと肩に手を置いたりするような接触行為と同じで、ファーストネーム呼びは言葉で相手の身体に触れる行為と同等であることを自覚しなければなりません。

相手との仲を深めたいときのルール

ちなみに、ファーストネームで相手を呼ぶ「名前呼び」は、男女の仲が深まる上ではかなり重要な通過点になっています。付き合い始めてから呼称を変える場合もありますが、付き合う前段階として互いの距離を近づけるために名前呼びをする(もしくは、したがる)ケースもあります。

出会ったときの名字呼びが定着してしまうと、その距離感で固定されてしまう危険性もあるため、「気になる相手はなるべく早い段階で名前呼びに移行させたい」と考えるのも仕方のないことです。

そんなときは、いくつか方法がないわけではありません。最も正攻法といえるのは、「名前呼びをしてよいか」と素直に聞くことです。ただし、そんなことをすればあなたの好意も思惑もバレバレになります。私はこれを、最近よく小学4年次にやる「1/2成人式」になぞらえて、「1/2告白」と勝手に呼んでいます(笑)。

ストレートに「付き合ってくれ」と依頼するわけではないので、断られてもダメージが少ない(本書の言い方では、自分のポジティブ・フェイスを損なう危険性が少ない)のが利点です。

とはいえ、あまりにストレートすぎると相手も迷惑でしょうから、そう呼ぶ(=近づく)だけの理由を添えておくのが良いかもしれません。そうすることで接近しやすくなるからです。これはPPS-13「理由を言う」に相当します。ただし、相手に断られることもありますので、そのときは諦めてください。他人の心を都合よく操る魔法はありませんので。

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