誤解されて世に広まっている
ところが、多くの入門書や企業研修用の資料では、この節約率をそのまま「記憶の残存率」として紹介し、「1日後には67%忘れる」「1週間後には77%忘れる」といった誤解のある説明がされています。
さらに困ったことに、その数字が、意味を理解している知識にも、イメージしやすい内容にも、丸暗記にも、すべて一律に当てはまるかのように説明されているのです。しかし、そんなことはありませんよね。つまり、「エビングハウスの忘却曲線」を「私たちの勉強の忘れ方そのもの」と理解してしまうのは、そもそもグラフの意味を取り違えている、ということになります。
3つ目は、多くの本で紹介されている忘却曲線の横軸です。
先ほどの図表1を見てください。「1日後、7日後、31日後」のように時空(期間)が飛んでいます。こういうグラフは詐欺グラフと呼ばれることもあり、誤解を招きやすい見せ方です。エビングハウスの忘却曲線を説明する書籍や資料には、詐欺グラフに分類されるようなものも見かけます。「横軸の設定」が変わるだけで、グラフの印象が変わることもあるのです。
「忘れる前に復習」は非効率
ここでお伝えしたいことは「意味がよくわからないまま、ひたすら同じものを機械的に暗記して、決められたタイミングで復習する」ような勉強をしてしまうと、エビングハウスが設定した覚えにくい条件(無意味綴り)の機械的な反復を、再現することになりかねないということです。
エビングハウスの忘却曲線に当てはまるような無意味なものを強引に覚える勉強は、そもそも推奨される勉強法ではないのです。
多くの人が、忘却曲線(図表1)に沿うように忘れていくことを恐れて、記憶が鮮明なうちに何度も復習しようとします。本書で述べた「忘れる前に復習する勉強法」です。もちろん、それでうまくいけばいいです。
でも、「忘れる前に復習する勉強法」は、そもそも多くの勉強時間が十分にないと実現できません。その上、この方法は認知心理学の研究では、効率的ではないということがわかっています。そのカラクリをちょっと見てみましょう。
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のビョルク教授が提唱する概念に「望ましい困難(desirable difficulties)」というものがあります。
「望ましい困難」とは、学習時に「あえて負荷」をかけたほうが、長期的な記憶や学習効果が高まるということです。つまり、快適で楽な勉強はすぐに忘れ、しんどい勉強は身につくということです。筋トレと同じなのです。

