「最高のドバイ暮らし」をSNSで発信
UAE政府は観光客だけではなく実際に住んでくれる人への広報を熱心に行ってきました。行くだけではなく「住んでみたい街」、それがドバイの魅力です。
一定額以上の不動産購入者や投資家向けの居住許可や、先述した5年か10年居住可能な「ゴールデンビザ」を提供しています。物件購入でビザが得られる仕組みです。
この制度を広報するにあたり、インフルエンサーが実際にドバイの物件に住んで、どんな生活をしているのかを投稿してきたのです。豪華で美しいタワマン、プール、レストラン、清潔な街並み、夜景、車、オフィス、パーティー、イベント、家族連れに優しい施設、素敵な学校などの「ライフスタイル」をInstagramやTikTokで頻繁に投稿します。大手デベロッパーやテレビが広告を流すよりも生活の様式が身近に感じられ効果的です。
ドバイの「攻めの戦略」から学べること
3つめの理由が国家ブランドの構築です。
先述した、クリエイターを通してUAEを活性化するための政府組織である「クリエイターズHQ」(Creators HQ)によれば、UAEに集まったクリエイターは「単に再生数を稼ぐ存在ではなく、人々との信頼関係を築き、世論を形作り、社会・経済・文化への認識を動かす存在」としています。
つまり政府は、インフルエンサーを単なる広報役ではなく、UAEという国の海外に対するイメージを作り出す「重要な語り手」として扱ってきたのです。
そこで若くて有能かつ明るいインフルエンサーを大量に誘致し、「未来志向」「国際性」「寛容」「成功」「安全」という印象を世界に広げたかったのです。その中心は、若いユーザーが多いInstagramやTikTok、YouTubeなど、動画や画像中心のSNSです。
2025年に政府が発表した国家戦略「エミラティ・ナショナル・アイデンティティ・ストラテジー」(Emirati National Identity Strategy)では、UAEの国家アイデンティティを国内外で推進することを目標にし、コンテンツ制作者向けのメディアの内容方針と行動規範を整備する方針を打ち出しています。
つまりUAEは、国家ブランドをSNS時代に合わせて拡張するために、かなり作り込んだ戦略を持っているということなのです。
日本政府は日本の対外イメージ作りをまだまだテレビや雑誌など既存のメディアに頼っていますが、UAEのようにSNSやインフルエンサーを通したもっと攻めの戦略も必要でしょう。


