カリウム不足で脳心腎疾患リスクは3.2倍に
この研究の評価項目は、脳血管疾患、心血管疾患、腎疾患(透析に至る腎臓病)の複合評価項目と全死亡であったため、これら脳心腎疾患と全死亡のリスクを減らすためには、果物野菜を多く摂取し、1日尿中カリウム排泄量を増加させればよいということになります。
具体的に述べますと、本研究での1日尿中カリウム排泄量の平均値は1日あたり1.6gであったのですが、脳心腎疾患のリスクは1日尿中カリウム排泄量が1.2gに低下した場合には2.3倍になり、1.0gに低下した場合には3.2倍に増加していました。
また、全死亡のリスクは、1日尿中カリウム排泄量が1.4gに低下した場合には1.4倍に増加し、1.2gに低下した場合には1.9倍に増加し、1.0gに低下した場合には2.3倍に増加していました。さらに詳しく述べますと、脳心腎疾患は61名であり、その内訳は心血管疾患29名、脳血管疾患24名、腎疾患(透析に至った腎疾患)8名でした。
全死亡は110名であり、脳心腎疾患による死亡は33名、脳心腎疾患以外の死亡は77名で、その中でも癌による死亡が36名、肺炎による死亡が17名と特に多かったことが特筆されます。
果物・野菜で防げるのは心臓病だけじゃない
このように、1日尿中カリウム排泄量を指標として果物野菜摂取を見ると、果物野菜摂取量が少ない場合には、脳心腎疾患以外に、癌、肺炎による死亡が多くなるという結果から、果物野菜摂取の健康効果は脳心腎疾患の予防にとどまらず、癌や肺炎などのより多くの疾患を予防できると考えられます。
我々は、NOBUNAGA研究の論文発表を2022年に行ったのですが、時期を同じくして同年に、オランダのアムステルダム大学のWouda RDらにより、2万5639例の参加者について1993年から1997年まで登録されて、2013年まで経過観察されたEPIC‐Norfolk研究の結果がヨーロッパで報告されています。
それによると、1日尿中カリウム排泄量を低値群、中等値群、高値群の3群に分けて解析したところ、1日尿中カリウム排泄量が低値群に比べて高値群では統計学的に有意に心血管疾患の発生率が低値であったと報告されています※6。つまり、果物野菜をたくさん食べていた群は心血管疾患の発症リスクが低かったのです。
彼らは、カリウムにはナトリウムを排泄する作用に加えて、心臓を保護する別の作用があると推察しています※6。
※6 Wouda RD et al. Sex-specific associations between potassium intake, blood pressure, and cardiovascular outcomes: EPIC-Norfolk study. Eur Heart J 43: 2867-2875, 2022


