脳心腎疾患・全死亡リスクも低下させるワケ
果物野菜を多く食べると健康に良いというのは、一般によく知られていることであると思いますが、具体的にどのような効用があるのかについてはあまり知られていないと思います。ここでは、果物野菜摂取が実際に脳心腎疾患や全死亡リスクを低下させることができるという臨床研究の結果について述べたいと思います。
果物野菜にはカリウムが多く含まれています。また、1日尿中カリウム排泄量の一番多くを占めている食物は野菜であり、次いで果物であるとの報告がなされています※1。したがって、1日尿中カリウム排泄量の測定値を、果物野菜の摂取量の指標とみなすことができると報告されています※1。
カナダのマックマスター大学のO’Donnell MJらは、大規模臨床試験を行って、心血管病あるいは糖尿病の患者2万8880人を対象として平均56カ月間経過観察した結果、1日尿中カリウム排泄量が少ない患者では脳卒中の発症リスクが増加することを報告しています※2、図表1。
※2 O’Donnell MJ et al. Urinary sodium and potassium excretion and risk of cardiovascular events. JAMA 306: 22292238, 2011
また、O’Donnell Mらは、17カ国の10万1945人の一般人を平均3.7年間経過観察した結果、1日尿中カリウム排泄量が少ない場合には心血管疾患の発症リスクが増加し、様々な原因による全死亡も増加したことを報告しております※3、図表2。
※3 O’Donnell M et al. Urinary sodium and potassium excretion, mortality, and cardiovascular events. N Eng J Med 371: 612-623, 2014
血圧が正常でも病気になる人の特徴
さらに、米国ハーバード大学のMa Yらは、1万709人の健常者の1日尿中カリウム排泄量を測定して平均8.8年間経過観察した結果、1日尿中カリウム排泄量と心血管病リスクが逆相関し、1日尿中カリウム排泄量の増加は心血管病リスクの低下を示し、1日尿中カリウム排泄量の低下が心血管病リスクの増加を示したと報告しています※4、図表3。
※4 Ma Y et al. Multiple 24-Hour Urinary Sodium and Potassium and Cardiovascular Disease. N Eng J Med 386: 252263, 2021
著者らが、NOBUNAGA研究※5において登録された3669名のうち、登録されてから少なくとも6カ月後のデータが得られた3210例を解析の対象としてデータを解析した結果、1日尿中カリウム排泄量が少ない患者では、脳心腎疾患の発生率が有意に高かったです※図表4-A。さらに、1日尿中カリウム排泄量が少ない患者では、全死亡率が有意に高かったです※図表4-B。
※5 Minatoguchi S, NOBUNAGA investigators. Lower urinary potassium excretion was associated with higher risk of cerebro-cardiovascular- and renal events in patients with hypertension under treatment with anti-hypertensive drugs. J Cardiol 80: 537-544, 2022
本研究では、対象者全員が降圧薬によって治療されており、収縮期血圧と拡張期血圧が平均で135/77mmHg前後にきちんとコントロールされていたのですが、このように血圧がコントロールされている状態であっても1日尿中カリウム排泄量がより少ない場合には脳心腎疾患、全死亡率が有意に増加したという結果は、カリウムにはナトリウムを排泄して血圧を下げる効果だけではなく、脳心腎に対する直接的な臓器保護効果があることを意味しています。




