「辞めたら状況が良くなる」は思い込みに近い
とはいえ、会社に所属する以上、好きなことだけをやるというのは難しいもの。すべての転職先や配属先、異動先、業務内容を思い通りに選べるわけではありません。意に沿わない転職や配属、異動、業務への対応と、それで生じる「辞めたい」の感情にどう向き合えばいいのでしょうか。
「『自分にとって必要な学びの機会』と捉えられるかどうかが分かれ目です。希望した環境で働けなくても、『これは今の自分にとって意味のある経験だ。ここで何を学ぶべきかを考えよう』と思えれば環境に適応しやすいですし、「合わずに辞める」の繰り返しに陥ることを防げます。
そして『辞めたら今より状況が良くなる』とは限らないという点も、考慮しておきたいところです。不満ばかりに目が向いて転職した結果、はじめて前の職場のありがたみに気づく、ということは往々にしてありますから。
大事なのは、『辞めたい』という感情を論理的に分析することです。『嫌だ、無理だ』という感情が積もっている。では、その感情のそもそもの原因は何なのか。先ほどの「4つの欲求不満」に落とし込むと、どの部分に該当するのか。今の環境で、本当に解消できないのか。逆に、他の環境であれば必ずしも解消されるのか。困っていることをまずは上司に打ち明けたり、人事に相談してみたり、まずは原因を解消するアクションを取ってみると、意外にラクになることもあります。
キャリアを続けていく限り、環境に適応する力はあらゆる職場、あらゆる場面で求められます。もちろん、ハラスメントや明らかに不健全な環境から距離を取る判断が必要なケースは別ですが、環境を変える前に、本当に辞めることで解決するのかを一度考えてみてほしいですね」
「辞めたいからSNSやAIで情報収集」の思わぬ落とし穴
「辞めたい」の感情と健全に向き合う上では、SNSなど外部から得られる情報との接し方にもコツがあるといいます。
「SNSの情報が『辞めたい』という感情を強めることは大いにあり得ます。人間の心理には確証バイアス(自身の先入観や意見を支持する情報のみを集め、反証する情報を無視または排除する心理作用)が働いており、自分の考えが正しいことを確認したがる性質があるからです。
『辞めた方がいいんじゃないか』という半ば願望のような仮説を持ってSNSを見ると、転職して成功した人の情報ばかりが目に入る。転職して失敗した人、前の会社の方が良かったと後悔している人の情報は目に入ってこない。
また、生成AIに『辞めるべき?』と聞いて、辞めた方がいい理由、辞めない方がいい理由の両方が出てきたとしても、辞めた方がいい理由ばかりに意識が向いたりする。相談すること自体はありですが、こういった確証バイアスが働かないように注意すべきでしょう。
まずは自分の気持ちを受け止めてあげる。そのアクションは大切ですが、大きな意思決定をするにあたっては『自分に都合の良い情報を優先して取りに行っていないか』を十分確認したいところです。
強い感情を抱いている時ほど、外の情報に慎重になるべきでしょうね」
「辞めたい」という感情は、誰にでも生じうる自然なものです。大切なのは、その感情に振り回されるのではなく、一度立ち止まって原因を見つめ、今の場所でできることを探してみること。その積み重ねが、自分だけのキャリアを築いていく土台となるはずです。
【出典】
※マイナビ転職『【新入社員の意識調査】「辞めたい」と思ったことがある新入社員は3人に1人。離職防止のカギは「給与」「仕事内容の適性」?』
取材・編集:はてな編集部 制作:マイナビ転職


