感情のラベルを変える

不安な時に、いきなりリラックス状態になろうと、無理に心臓のバクバクを忘れようとすると、脳のリソースが「感情の抑え込み」に浪費され、肝心のパフォーマンスに使えなくなってしまうのです。

対して、不安を「興奮」と言い換えても、「心臓がバクバクしている」という事実を否定する必要はありません。それでいて、もともとの「不安」という感情の再評価をすることができ、「これは体が頑張ろうとしているサインだ」と新しい感情のラベルに張り替えてくれるのです。

そうすると、脳はスムーズに「脅威モード」から「機会モード」へとシフトし、高まったエネルギーをそのままパフォーマンスに活かすことができるのです。

スーパーヒーローマントを着た女性
写真=iStock.com/Olga Yastremska
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実践ステップ

① 心拍上昇を歓迎する:本番前、心臓が高鳴り始めたら「やばい、緊張してきた」と思うのをやめ、「お、エンジンがかかってきた。体がエネルギーを送ってくれている」と歓迎する。

② 声に出してラベリングする:「ワクワクする」とつぶやく。脳は自分の内面よりも、自分の発した言葉(外面)を事実として認識する。

③ 「機会」にフォーカスする:「失敗したらどうしよう」ではなく、「うまくいったら、こんなに良いことがある」というポジティブに意識を向ける。

アドバイス
緊張しそうな場面を想像して、ドキドキをワクワクに読みかえるリアプレイザルの練習をしておくと、本番での効果がアップします。

ムカデは足の動かし方を考えると歩けなくなる

ある日、カエルがムカデに聞きました。

「100本もの足をどうやって動かしているの? どの足の次にどの足を動かすの?」

ムカデは考え込みました。

「ええと、右の23番目の次に左の……」

考え始めた途端、ムカデは足が絡まって動けなくなってしまいました。

この逸話のイメージは、人間が本番で失敗する「チョーキング」のメカニズムをうまく表しています。

スポーツや楽器演奏、計算といった熟練したスキルは、反復練習によって小脳や大脳基底核といった「無意識の脳」に記憶されています。普段は「自動パイロット」でスムーズに動いているわけです。

しかし、プレッシャーがかかると、私たちは失敗を恐れて「絶対にミスしちゃいけない」と考え、意識的に動作を監視し、コントロールしようとしてしまいます。

すると、処理が前頭前皮質(意識的な脳)に戻ってしまい、初心者のようなたどたどしい動きになってしまうのです。ムカデが足の動かし方を考えたせいで歩けなくなったのと同じです。このままでは、テスト本番で実力を100%出し切れません。