食べたり食べなかったりを繰り返す

(筆者の運営する群馬県の)萬田診療所の近くに「我が家」という介護施設があります。入居者は90歳前後の認知症のおばあちゃんが中心で、「入院させない」「無理して食べさせない」を実践して胃ろうや誤嚥性肺炎とは無縁の生活を送っています。

萬田緑平『死ぬまで生きる』(河出新書)
萬田緑平『死ぬまで生きる』(河出新書)

何度も食べられなくなって、無理に食べさせずに我慢しているとまた食べられるようになります。そのたびに食べる量は少なくなってやせていきますが、自分の口から食べて最後は老衰で亡くなります。病院でチューブだらけになって誤嚥性肺炎の熱で消耗して亡くなるよりも、ずっと穏やかで幸せそうです。しかも、明らかに長生きしています。

「ここのばあちゃんたちは不死身か⁉」と思ってしまうくらいです。いや、僕が人間の生きる本来の力を知らなかっただけで、このおばあちゃんたちの生き方が本来の人間の生き方なのでしょう。

「死ぬまで胃ろうにしない」が理想

介護施設や患者さんの自宅で食事の様子を観察すると、本人が口を開けなくなるまでなんとか食べさせようとしているケースがよくあります。無理やり口に食べ物を押し込むことはしていないので、「無理に食べさせていない」と思っていても、それは食べさせる側の意識です。

食べることは生きる楽しみにつながります。患者さん本人が食べられる範囲で食べられる量を食べて生き抜いてほしいと思います。胃ろうで不自然に命だけをつなぎとめることより、死ぬまで胃ろうにさせないほうがよっぽど大切ではないでしょうか。

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