人工栄養をやめると、どうなるか

しかし、もし胃ろうを含めた人工栄養をいっさいやめた場合、通常は数週間以内で亡くなります。

「胃ろうの中止=患者さんを死なせること」です。

家族から「やっぱり胃ろうは中止したい」と言われたからといって、医師はそう簡単に「わかりました」とは言えません。他の家族や親類からクレームが起きるという、医師にふりかかる危険だってあるのです。

緩和ケア医の萬田緑平さん、群馬県前橋市の萬田診療所にて、2026年2月
撮影=プレジデントオンライン編集部
緩和ケア医の萬田緑平さん、群馬県前橋市の萬田診療所にて、2026年2月

胃ろうを拒否するのは勇気がいる

では医師から「胃ろうを造りましょう」と言われて断った場合はどうなるのでしょうか。主治医に「このままでは死にますよ」「見殺しにする気ですか」と脅されるかもしれませんし、「わかりました、では退院してください」と突き放されるかもしれません。

胃ろうを断ったときに病院で待っているのは、「看取り態勢」です。でもこれは、萬田診療所のやっている看取りとは違います。僕たちはその人らしく生き抜いてもらうことを重視しますが、病院では「死ぬのを待つ」だけです。

それでも信念を貫き通すことは難しいことと思いますが、迷いがあるのなら、医師の言いなりにならないことです。看取り態勢を覚悟の上で、嚥下リハビリなどに力を入れている施設や、在宅医療チームの力を借りましょう。在宅医療を熱心に行っている病院や診療所は全国にたくさんあります。

介護
写真=iStock.com/byryo
※写真はイメージです

医療関係者が胃ろうをしないワケ

もしも僕が患者さんの立場だったら、僕は胃ろうをつけることなく「老衰モード」に入って死んでいきたいと思っています。僕の家族であれば、無理のない範囲で食べられるように食事介助をし、食べられたり食べられなかったりを繰り返しながら「老衰モード」に入っていくのを見守ります。

もちろん、僕は最終的に胃ろうをつける決断をしたご家族を責めるつもりはありません。食べられなくなったら、死。この死は餓死ではなく、老衰です。本人の意志がわからないとき、胃ろうを断り、この自然な死を受けとめて看取る選択のほうが厳しいと思うからです。

ただほとんどの医療者が「自分や自分の家族なら胃ろうはしない」と考えているのも事実です。