円安の進行は避けられない
財政赤字が拡大し、国の借金が増え続けた場合、もっとも端的に影響が出るのが為替だ。つまり円安の進行が避けられなくなるのだ。政府・日銀は1ドル=160円を付けたのをきっかけに、4月30日に大規模な「円買い・ドル売り」の為替介入を実施し、いったんは円高方向に為替を動かした。しかし、その後、ジワジワと円安が進み、再び1ドル=159円近くになっている。要は円高に動くほどの「国力」が示せていないわけだ。
その円安が進めば、輸入物価の上昇が進む。輸入する原油やLNG(液化天然ガス)の代金も大きく上昇することになり、国内のガソリン価格や電気代のコストを大きく引き上げる。何ということはない。再びガソリン代や電気代の補助金を積み増さざるを得なくなる。イタチごっこを繰り返すことになるわけだ。
では、どうすれば財政を健全化し、国の借金を減らすことができるのか。国の借金が1000億円を突破しそうな頃は、財務省もマスメディアを動員して借金増を抑えないと国の財政が破綻するというキャンペーンを張った。消費税率の引き上げが不可欠だというのが財務省のもっぱらの主張で、財政再建のためには増税を、という世論喚起に必死だった。
財政健全化よりも積極財政に
2021年10月には矢野康治財務次官が月刊誌『文藝春秋』に寄稿し財政赤字を放置する日本の状況を「タイタニック号が氷山に向かって突進しているようなもの」だと痛烈に批判した。現役の次官が市販雑誌に寄稿するのは異例で、財務大臣などにも内諾を得た行動だったのだろう。
2021年3月末の国の借金は1216兆円と前の年度末に比べて100兆円近く増える異常事態だった。新型コロナやそれに伴う補助金の支出など、巨額の財政出動が行われたツケが借金の形で残ることになった。ちなみに、矢野次官の警句にもかかわらず、その後も借金は増え続け、2025年3月末には1300兆円を突破した。
結局、その後の内閣も、防衛費の大幅な増額や、景気対策の補助金などに大盤振る舞いを続け、いわゆるプライマリーバランスの黒字化も棚上げしている。高市内閣も財政健全化よりも積極財政に舵を切っているように見える。

