「備蓄米100万トン」では食料危機に対応できない

第二に、備蓄米100万トンの根拠は、小麦や牛肉等をふんだんに輸入しているためコメの消費量が700万トンにすぎない現在の食料消費を前提として、「10年に1度の不作(作況92)や通常程度の不作が2年連続しても国産米で対応できる量」として約100万トンを適正水準としているものである。

シーレーンが破壊され全ての食料輸入が途絶する際に、国民に戦時中の一人一日当たり2合3勺の配給米を供給するためには、1600万トンのコメが必要となる。毎年の生産量700万トンに備蓄米100万トンを加えても、その半分しかない。国民は半年後に餓死するということである。つまり、備蓄米100万トンは食料危機を想定したものではないのである。

第三に、減反をやめれば、短期的にコメ生産は1000万トン、品種改良で単収が上がれば長期的には1700万トン生産できる。国内消費を700万トンとすれば、短期には300万トン、長期には1000万トン輸出できる。

輸入が途絶する危機の時には輸出もできない。平時に輸出していたものを食べれば危機を凌ぐことができる。最低限の配給米は確保できる。つまり、減反を廃止し、平時に輸出をしていれば無償の備蓄の役割を果たす。裏を返せば、備蓄米制度は減反を前提にしているのだ。

穏やかな海をコンテナ船が航行中
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財務省案に農水省は反発する

なお、財務省は国産米を備蓄用に買い入れるのではなくコメの輸入枠77万トンを備蓄用に使用すべきだと主張している(参考記事:戻らぬ備蓄米、国産限定の入札ネックに 財務省は無関税米の活用提起)。安い輸入米を利用するので財政負担が少なくなるのは事実だ。

しかし、農林水産省が毎年20万トン国産米を買い入れてきたのは、食料危機に備えてのものでも食料安全保障のためでもない。20万トン分市場から隔離することで米価を浮揚させる効果を狙っているのだ。

つまり備蓄米制度は表向きの食料安定供給という理由ではなく、農家・JA農協保護のために作られ運用されてきたのである。備蓄米制度にこのような隠された動機や目的がある以上、財務省案は農林水産省をはじめとする農政トライアングルの抵抗を受けるだろう。食料危機にも備えられ、財政負担もなくせるのは、減反を廃止して備蓄米制度自体をなくすことだ。財務省には、こうした王道の主張をしてもらいたい。