農水省とJAの出来レース

しかし、在庫には金利倉敷料(保管料)がかかる。できれば在庫は持ちたくない。

ここで、登場するのが政府(農林水産省)である。同省が備蓄米として市場からコメを買い上げてくれれば、そのぶんJA農協の在庫は縮小する。つまり政府が納税者の負担によってJA農協の保管料を肩代わりしてくれるのだ。そのうえ、JA農協は米価を高く設定できる。

農林水産省は適正な備蓄在庫を100万トンだとしている。昨年59万トンの備蓄米を放出した。今残っている32万トンも5年古米等で家畜のエサに処分寸前でいずれ新米を買い入れるしかない。

つまり、政府(農林水産省)は備蓄米の買い入れを通じてJA農協等の過剰在庫の100万トンを引き受けてくれることになる。これを見越して、JA農協は異常な在庫を積み増し、それによるバブル米価を実現したのだ。

100万トンは民間在庫が前年比97万トン増加していることと符合している。しかも、この政府備蓄在庫は市場から完全に隔離されるので、市場価格低下の圧力とはならない。農林水産省とJA農協の出来レースである。

30kgの紙袋で保管される政府備蓄米
30kgの紙袋で保管される政府備蓄米(写真=農林水産省/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

9月にコメ価格が大幅に下がるワケ

しかし、農林水産省は通常1万5000円で備蓄米を買い上げてきたのに、3万6000円で買い上げると財政負担が膨大なもの(今まで行ってきた毎年の20万トン買い入れでも500億円が1200億円)になる。さすがに財務省も首を縦にふらない。JA農協に米価を3万6000円より下げてもらわなければならない。

ところがJA農協にも事情がある。25年産米の価格を下げると、すでに農家に払った概算金から過払い分を徴収しなければならない。これは農家に不評となる。かつて農家が翌年JA農協に出荷しなかったこともあった。

しかし、26年産ならある程度下げても農家は文句を言わない。これまでも米価は毎年変動するのが当然だったし、25年産米はバブル米価なので、これから少々下げても許容される。26年産は9月から収穫・販売される。ここでJA農協は、政府に買い入れてもらうために概算金を下げてくるというわけだ。概算金が下がると卸売業者への販売価格も下がる。私が9月に価格が大きく下がると言ったのは、このためである。

4月農林水産省は備蓄米として21万トンをJA農協等から買うために入札にかけた。落札したのは17万トン、落札率は83%である。次回の入札でこれは100%となる見通しである。