政府の備蓄米買入れ価格2万円の意味

ここでのポイントは二つある。

農林水産省が買い入れるため落札にかけたのは、今市場で流通して3万6000円を付けている25年産米ではなく、これから作付けされる26年産米だということである。26年産米の価格が低下し、その価格で買い入れることを、JA農協とすり合わせ済みだったのだろう。

もう一つのポイントは、農林水産省がそれ以上では買わないとした落札予定価格が2万500円だったということだ。25年産米の3万6000円よりは下げる、しかし、通常の年の1万5000円までは下げない。

出来レースではないか。

結論を言おう。9月に農家がJA農協を通じて販売するコメの価格は60キログラム当たり玄米で2万円程度に下がる。消費者がスーパーから購入するコメの値段は精米5キログラム当たり2500円から3000円になるだろう。しかし、2年前の2000円以下には下がらない。

備蓄米は必要ない

備蓄米が100万トンに満たないことは食料安全保障の観点から問題だとか、新たに買い入れる前の備蓄米32万トンは年間の消費量700万トンからすれば国民15日分にしかならないという、指摘がある。

しかし、これは3つの点で間違いである。

まず、政府が在庫を持とうが民間が在庫を持とうが、国民への食料供給という点では違いはない。食料危機が起きればコメの価格は高騰する。そのとき民間業者はその在庫を放出することで利益を得る。

何らかの事情でコメが260万トン不足したとしよう。国内にある政府の在庫が20万トン、民間在庫が150万トンのとき、まずは国内で170万トンをかき集めて対応し、残りの不足分90万トンは海外からの輸入で凌ぐことになる。このときは海外にあるコメの在庫を利用することになる。政府の在庫だろうと民間在庫だろうと海外にある在庫だろうと、コメを食べる消費者には違いはない。

強いて違いを見つけるとすれば、政府にしろ民間にしろ、平時に安く買ったものを危機時に高く売るので、棚ぼた利益” windfall profits”が発生する。それがだれに帰属するかに過ぎない。モノの価格は需要と供給で決まる。原則一物一価である。基本的には、備蓄米だろうがJA農協の販売するコメだろうが価格は同じである。違う値段がつけられれば、安く買って高く買ってくれるところに売ると必ず儲かる。これで最終的には同じ値段がつけれれる。

小泉農相がコメの値段を下げようとしてスーパーでの特売的に備蓄米を安く売ったのは異常なやり方だった。業者でない消費者は転売しなかったが、備蓄米の価格が安いだけで全体の需給で決まるコメの価格水準は変化しなかった。経済学の基本を理解していなかったのだ。

いずれにしても、民間在庫が100万トンも過剰にある今、政府が備蓄米を買い入れる必要性は全くない。JA農協のためとしか言いようがない。