「儲かる農業」への転換と全国展開

「鮮度が保てる=長く売れる」という方程式は、地域の農家を動かした。

熊本では「ブロッコリーは儲かる品目」として作付けが爆発的に拡大。國﨑青果はその後、各地の拠点に製氷機を導入し、長崎や熊本を筆頭に、北海道から徳島、埼玉まで全国を網羅する供給ネットワークを築き上げた。

その勢いは数字にも表れている。井上さんが入社した2006年に約10億円だった同社の売上は、2025年には年商88億円を記録するまでに成長。扱うブロッコリーは年間250万ケースに達し、まさに「ブロッコリー界のトップランカー」として市場を牽引している。

流通革命とバイオテクロノジー技術の賜物

こうした国産ブロッコリーの台頭を語る上で、日本の種苗会社による「品種開発」の功績も無視できない。

ブロッコリーは本来、涼しい気候を好む野菜だ。しかし、現在では一年中、国産が欠かさず食卓に並ぶ。この「リレー栽培」を可能にしたのが、日本の気候を知り尽くした種苗会社の技術だ。

「サカタのタネ」をはじめとする国内の種苗メーカーは、日本の多様な産地に合わせて、数え切れないほどの品種を生み出してきた。「夏場に強い品種」「病気に強い品種」、さらには「植えてから収穫までが早い品種」など、産地と時期のパズルを埋めるように品種ラインナップを揃えていったのである。

また、開発の基準は「育てやすさ」だけではない。輸送中の衝撃に耐えられるよう、つぼみの密度がギュッと詰まった「締まりの良さ」や、店頭で並んでも変色しにくい「濃い緑色」の維持など、流通と消費の現場が求める理想のブロッコリーがタネの段階から設計されているのだ。

この「タネの進化」があったからこそ、農家は安心して作付けを拡大でき、消費者はいつでも新鮮な一株を手に取れるようになった。国産ブロッコリーの快進撃は、日本のバイオテクノロジーの結晶ともいえる。

「輸入ものに頼らなくても、いつでも新鮮な国産が手に入る」

この当たり前を支えているのは、産地や生産者、種苗会社の飽くなき挑戦だ。52年ぶりの指定野菜化は、いわば日本の生産者たちが積み上げてきた「鮮度保持の努力」と「ビジネスとしての自立」が、国家に認められた瞬間だったのだ。

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