“兼業芸人”の活躍が目立つ東京
さらに、大阪と東京のお笑い界を分かつのは、市場規模の差だけではない。そこには、芸人という生き方に対する「思想」の決定的な断絶がある。
東京では、「大学お笑い」や「社会人お笑い」といった、いわゆる“兼業芸人”の文化が急速に成熟してきた。象徴的なのは、大学在学中から注目を集めたラランドや、令和ロマン、真空ジェシカといった次世代の旗手たちだ。彼らは既存のお笑い界を戦略的にハックしている。
東京では学業や仕事と両立しながらお笑いを兼業として続けられるグラデーションが当たり前に存在していて、その厚みのある層から、既存の型にはまらない新しい笑いの文化や、洗練された戦略を持つ強者が次々と生まれている。いわば、お笑いの研究と開発が、学業や本業から得られる自由な着想で日常的に行われている状態。
「本気でやるか、やらないか」の関西
対して西日本では、お笑いは依然として「本気でやるか、やらないか」という0か100かの二択を迫られる傾向が強い。お笑いの道を選ぶならば、学業や安定した職などの退路を断つ決意で養成所の門を叩く。そして、経済的な不安を抱えながら舞台に立ち続けることだけが「正解」とされる、ストイックな下積みを前提とした考えが根強い。
しかし、この「一か八か」を強いる文化は、現代においては諸刃の剣となっている。リスクが高すぎるために、本来お笑いの世界で輝けるはずだった多様なバックグラウンドを持つ才能が参入を躊躇してしまうし、生活の困窮という苦痛に耐えきれず夢破れる者も毎年後を絶たない。
東京のグラデーションを許す余白が、進化し続ける背景の要素となっている。だが、大阪もまた変わりつつある。加藤さんやこの劇場に出演する芸人たちの手によって、今、東京の後を追うように参入障壁は下がり、新たな熱が生まれ始めている。

