「吉本一強」業界構造の危うさ
この「エンジン」の少なさが、結果として現場に落ちる仕事の総量を減らしている。若手芸人にとって、大阪での成功は「限られたパイ」を奪い合うイス取りゲームだ。しかし東京は無数のエンジンが回転し、常に新しいイスが作り出される。のどから手が出るほどチャンスを欲している芸人の立場に立てば、東京進出やそもそもの出発点に東京を選ぶのは必然の選択と言えるはずだ。
ただこの問題の本質は大阪のお笑い市場が吉本興業に一極集中していることへの是非ではない。むしろ、「1社が市場の責任を背負いすぎている」という構造そのものの危うさである。
現在、大阪のお笑い界における仕事の創出は、実質的に吉本興業がそのすべてを担っている。110年もの間、芸人のために一生懸命に現場を耕し、舞台を作り、テレビやイベントとのパイプを繋いできた。その献身によって大阪の文化が守られてきたことは揺るぎない事実だ。ただ、健全な市場競争という観点から見れば、「1社が頑張らなければ、市場が止まってしまう」という依存度の高さはリスクを孕んでいる。
本来、市場の活力とは、多様なプレイヤーがそれぞれの視点で勝手に仕事を生み出すことで最大化される。しかし、現在の大阪は「吉本興業が仕事を供給してくれるのを待つ」という一極集中型になっており、その組織のキャパシティがそのまま市場の限界となっている。
吉本興業「だけ」が頑張り続けなければならないこの構造が、結果として大阪からチャンスを奪っている。1社にすべての雇用創出を委ねるのではなく、インディーズ劇場や他の中小資本が自律的に「新しい仕事の発生源」となることで、巨大企業の負担を減らしつつ、市場全体のパイを広げるべき時期に来ているのではないだろうか。

