リスク資産と安全性資産のバランス

この点を考えるうえで、参考になるのが「トービンの分離定理」と呼ばれる考え方です。トービンの分離定理を簡単にいえば、「どのリスク資産の組み合わせを持つか」と「どの程度のリスクを取るか(安全資産とどう配分するか)」は分けて考えられるという理論です。

5%刻みのドーナツグラフ
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まず、世界全体に分散された効率的なリスク資産を一つ選びます。その代表例が、オルカンのようなグローバル株式です。

そして、そのリスク資産に、預金や日本国債などの安全性資産をどの割合で組み合わせるかを考えます。この比率を調整することで、一人ひとりのリスク許容度やライフステージに応じた資産配分をつくることができます。この「リスク資産+安全性資産」の組み合わせこそが、理論的にも合理性が高く、個人にとっても理解しやすい資産配分の考え方といえるでしょう。

この考え方に立てば、役割ははっきりします。

•オルカン(グローバル株式)→長期的な成長を担うリスク資産
•現金・預金・日本国債など→生活を安定させ、使うための安全性資産

資産運用の本質は、「どの商品を選ぶか」よりも、この二つをどういう比率で持ち、どう変化させていくかにあります。取り崩しとは、この比率を人生の後半に向けて、少しずつ変えていくプロセスだといえます。

「100マイナス年齢」が目安になる

ここで、日本人特有の事情にも触れておきたいと思います。多くの日本人にとって、退職時は、人生で最も金融資産の残高が大きいタイミングになります。そして、その後も資産残高はなかなか減りません。

使うつもりで準備してきたはずのお金が、結果として「最後まで使われないまま残る」。これは決して珍しいことではありません。つまり、日本人にとっての本当の課題は、「どう増やすか」ではなく、「どうやって、納得感を持って減らしていくか」なのです。

そこで私が一つの目安として考えているのが、リスク資産の割合を「100マイナス年齢」に近づけていくという考え方です。

たとえば、

• 65歳であれば→リスク資産は35%
• 70歳であれば→リスク資産は30%
• 75歳であれば→リスク資産は25%

といった具合です。