新NISAは2026年に3年目を迎えた。「オルカン」の生みの親として知られる三菱UFJアセットマネジメント前常務の代田秀雄さんは「長期投資の鉄則は、市場に居続けること。途中で利益が出たから売却する、急落したから売却するという行為は避けるべきだ」という――。

※本稿は、代田秀雄『オルカン思考 世界経済を味方につける「長期投資」の教科書』(Gakken)の一部を再編集したものです。

頭を抱える実業家
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「投資=危ない」と遠ざけられていた時代

私たちが「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」――通称「オルカン」の源流である低コストのインデックスファンド「eMAXIS」シリーズを立ち上げたのは、2009年10月のことでした。

あの頃の日本は、まだ「投資信託」という商品が、広く国民のみなさんに必要とされる存在ではなかった時代です。個人の金融資産に占める投資信託の割合はたったの3%程度といったところでした。

とくに2000年代は、バブル崩壊やITバブル崩壊、リーマン・ショックといった市場の大きな下落を経験し、「投資=危ない」「減るかもしれないから預金がいい」という心理が定着していました。

金融広報中央委員会による調査(2010年)では、「金融商品の選択の際に最も重視していること」として“安全性を重視”と答えた人が48%にのぼり、“収益性重視”はわずか16%でした。このような心理的背景が、投資信託という商品を必要と感じにくくしていたという面がありました。

8年足らずで「10兆円」商品に成長した

しかし、私は、投資を限られた人だけの特権にしておくのは、あまりにももったいない、と考えていました。働きながら家計を支える人も、育児や介護に忙しい人も、少しずつでもいいから世界経済の成長を自分の味方にできるような仕組みがあれば、きっと人生の選択肢は広がるはずだと。

こうした「知識や時間がなくても、安心して世界に投資できる仕組みをつくりたい」。その思いこそが、「eMAXIS(イーマクシス) 」シリーズ誕生の原点でした。

代田秀雄さん
撮影=森カズシゲ
代田秀雄さん

そして、その理念をさらに研ぎ澄ませた形として誕生したのが「オルカン」でした。たった一つのファンドで、米国のテクノロジー企業から新興国の成長企業まで、世界中の株式市場に分散投資できる――しかも業界最低水準の運用コストを目指し、長期投資に適した形を追求したのです。

開発当初は疑問の声がなかったわけではありませんが、今では多くの方の人気を集め、投資を始める際、信頼できる最初の選択肢として活用されています。オルカンは設定後8年足らずで残高が10兆円に達しました。これはこれまでの日本の投資信託になかった現象です。