人事部こそ日本型経営の要

同様のことは、ジョブ型雇用かメンバーシップ型雇用かということに関してもいえます。ジョブ型の下にある米国の企業には、日本のような人事部はありません。各部門の長が、自分の部門の成長を図るのに必要と考える社員の採用や解雇を自分の権限として行っています。

リーマン・ショックの時に、多くの米国の金融機関の職員が、突然解雇されて会社を去る場面が日本のニュースでも放映されていましたが、あれがジョブ型雇用の実態です。

トランプ大統領が企業経営者だった時、気に入らない従業員を「お前はクビだ(You are fired!)」と言って解雇してみせる番組が人気を博していましたが、あれが米国のジョブ型雇用です。

指をつきつけるビジネスマン
写真=iStock.com/XiXinXing
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日本の企業は、そんなことはしません。日本企業の人事部は、雇用した従業員の能力を最大限引き出すために、会社全体の仕事の中でどこに配属したらいいかを考えます。

そのようにして、多様な力を持つ従業員の潜在的な能力を引き出して会社全体の成長につなげていくのです。それは、人的資本経営そのものです。

各部門の長は、もちろん人事についての要望は出しますが、個々の社員を自分のところに持ってきたり、他所にやったりという絶対的な権限、ましてや新たに雇用したり解雇したりという権限を持っていません。従業員を育てる主導権を人事部が持っているからです。

人間みな平等という日本の文化が育む世界

バブル崩壊後、雇用の過剰ということが言われ、人員整理が人事部の役割のようだった時期が長かったために、会社全体として従業員の能力を引き出し、それによって、人も会社も共に成長するというメンバーシップ型雇用の原点が忘れられてしまったのです。

そろそろ日本企業の人事の基本を思い出すべきです。従業員の様々な能力を引き出す人事は、様々な主体が「世間」の中で変幻自在に立ち現れてくるという日本語の世界、人間みな平等という日本の文化がはぐくんできた世界なのです。

とはいえ、グローバル化している企業の海外での経営においてはジョブ型雇用が不可欠です。メンバーシップ型の人事で社員を育てたとしても、社員がジョブ型の認識を持っていると、獲得した能力に対して給与が低いということで他の会社に移ってしまったりします。

そこで、海外ではハイブリッドな人事を行っていく必要があります。日本人の社員に対しては基本的にメンバーシップ型雇用を、外国人の社員に対しては基本的にジョブ型雇用をというように、使い分けていくことが必要です。