SNSで広がる「万能の睡眠法」にエビデンスはない

人々は睡眠についての情報を様々な経路で収集しているが、SNSからの情報はますます増えている。しかし、情報の裏づけとなるエビデンスは検証されていないことが多く、誤解を招きかねない。

SNSには研究の裏づけのない睡眠アドバイスが多い。最近TikTokやインスタグラムで広まった、夜、就寝前に口にテープを貼るマウステーピングをすると睡眠の質が改善し、いびきが減少するという情報はその一例だ。

マウステーピングと睡眠についてのデータはある。しかし、主に閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者を対象とした調査によるもので、被験者数はごくわずかだ。

くり返すが、この調査は一般の人々ではなく、非常に特殊な睡眠障害があるごく限られたグループを対象にしたものだ。研究ではマウステーピングがいびきと睡眠時の無呼吸症状を減少させた。この症状を持つ患者の睡眠の質を改善させる可能性はあるだろう。

問題は、マウステーピングは万人に効果があると一部のインフルエンサーたちが解釈したことだ。専門家の指導がなければ呼吸困難などの症状を引き起こしかねず、危険だ。にもかかわらず、多くの著名人やアスリートがマウステーピングを推奨し始めたのだ。

ビタミン剤もサプリも科学的根拠が乏しい

SNSの担った役割は悪だったのだろうか? 私はそう思う。一般的に、明確な情報――どんな種類で誰が対象かなど――を伝えることは非常に大切だ。不眠症の人々が、解決策はマウステーピングだと信じるかもしれず、誤った方向へ導けば危険なのだ。

睡眠改善を謳う特定のビタミン剤やサプリメントを推奨するインフルエンサーも同じだ。ほとんどの睡眠サプリメントの効果はエビデンスに基づいていない。この種の製品を購入する際に必要不可欠なのは、効能が科学的な研究結果に基づいているかを消費者が知り、慎重に検討した上で購入の決定を下すことだ。

ベッドに座り、サプリメントと水の入ったグラスを持つ人
写真=iStock.com/Farknot_Architect
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SNSのインフルエンサーが暴走した別の例は「午前5時クラブ」だ。大勢のインフルエンサーが朝非常に早く起きると概日リズムが整い、多くのエネルギーを生むとして拡散した。世の中には夜型の人も多く、この流行に同調圧力を感じれば、早朝に起きることで睡眠時間が(さらに)奪われる可能性があるということを考慮していない。

何度でもくり返すが、こうした主張には明確な科学的根拠が欠如しており、人によってはアドバイスに従うことでむしろ害をこうむることになるかもしれないのだ。