日本に今必要なのは、生産よりも、消費

しかし、これは明らかに時代遅れの考えかたです。

バブル崩壊後、日本は30年不況と呼ばれる時代に入りました。この不況が「消費不況」であり、不況の原因はモノの不足ではなく過剰な生産にあると看破したのは、日本でセブン‐イレブンを立ち上げた鈴木敏文さんでした。

大阪府のセブン-イレブン店舗
写真=iStock.com/robbin0919
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たしかに、戦後日本においては生産性向上が急務でした。モノを作れば売れた時代でもあり、生産性が高い会社ほど成長した。生産性神話の誕生です。

ところが、1990年代に入ると、史上初めて生産が消費を上回りました。これ以上生産量を上げても消費が追いつかない。豊作貧乏になるだけなのは明らかです。

それなのに、日本政府も、企業経営者も、なお生産性を上げようと血道をあげています。その上、コストカットのために従業員の給料までおさえる。これではますます消費が縮小し、豊作貧乏はひどくなるばかりです。

日本に今必要なのは、生産よりも、消費です。消費を増やすためには、従業員の給料を上げたほうがいい。もし私が経団連の会長なら「全員の給料を倍にしろ、それでマーケットが倍になるから」と呼びかけることでしょう。

国民も、生産性第一の思い込みを、一度リセットするべきです。

そういえば「アリとキリギリス」の寓話がよく教育現場で使われたのは、生産性神話を刷り込むためのお話だったのかもしれません。アリのようによく働き財産を蓄えておかないと、キリギリスのように餓死するよ。遊んでばかりはいけないよと子どもたちを脅します。

「働かざる者、食うべからず」の本当の意味

しかし、このスキーマが通用したのは生産性が低くモノがない時代のこと。今のように消費不況の時代では、積極的に遊び、消費をするキリギリスこそ善なのかもしれません。

逆に、生産ばかりのアリは、消費不況の元凶と非難されてもおかしくない。少なくとも冬になっても食べ物が余っているので、キリギリスも餓死はしません。

モノ余りの時代にあっては消費こそ伸ばさないといけない。となると、年金生活者を社会のお荷物扱いする風潮が、どれほど無礼で見当はずれであるのかわかるはずです。生産せずに消費をしてくれる人は、むしろ経済を成長させてくれる神様のような存在だからです。

最後に「働かざる者、食うべからず」の意味を日本人が誤解していることもつけ加えておきます。

この言葉はレーニンが広めたことで有名ですが、レーニンの意図するところは、労働者から搾取して不労所得でラクな生活を享受する資産家たちを戒めるために言ったもので、ひいては資本主義体制を批判するためにこう言ったのです。

やむをえない理由で働けない人や、自分の意志で働かない人を、追い込むような意味で言ったのではありません。