「現場まかせ」には限界がある
現場では日々こうして「かぎられた資源をいかに最も必要とする人にとどけるか」という切実な問題に直面し、そのつど困難な選択をしていかねばなりません。
しかしこうした「精神論」や「現場の我慢」はとても長く続けられることではありません。「その場しのぎ」の運用では、現場スタッフよりも医療を必要とする患者さんに、文字通り「死活」を迫ることに早晩ならざるを得ないからです。
それに対処できるのは政府しかありません。この国に住むすべての人の命を守るために現場まかせにせず、国が一刻も早く真剣に戦略を講じて実行にうつすことが、今まさに求められているのです。
まず第一に、医療資材にかかる材料不足を「災害と同等の緊急事態」と認定して、施設間での在庫の貸し借りを公的に調整できる体制を構築することが必要です。
具体的には医療資材を経済安全保障上の「特定重要物資」に緊急指定し、各医療機関における医療資材の在庫を品目ごとに把握する作業を即座におこなう必要があります。
また国民生活安定緊急措置法を適用し、一部の医療機関や業者が必要以上に医療資材を買い占めていないかも把握しなければなりません。こうした「強制力」の発動は、災害と同等の緊急事態、すなわち「有事」であると政府が認定し実行にうつさないことには不可能です。
十分な説明責任のもと、地域医療連携の枠組みを超えて、国が責任を持って「必要な場所へ必要な資材を動かす」調整役を担わねばならないと言えるでしょう。
「緊急物価スライド制」の導入
ナフサ価格の激変に合わせて、材料価格を柔軟に自動調整する仕組みとして「診療報酬への緊急物価スライド制」を導入することも重要です。
診療報酬は公定価格であるため、医療資材の物価が激変した場合には、それがそのまま医療機関の持ち出しになってしまい、最悪の場合、経営破綻しかねません。
診療報酬の改定時期を待つことなく緊急物価スライド制を導入することで、現場やメーカーに「供給を続けても経営が破綻しない」という安心感を与えないかぎり、医療資材の安定供給は困難とならざるを得ません。
そしてなにより、透析をはじめとした現場の医療を一日たりとも途絶しないよう「欠品」を回避せねばなりません。
早ければ4月末には欠品が現実なものとなるとの予測もされているのですから、海外からの原材料の調達を船便だけに頼っていては間に合いません。
タイやベトナムといった代替拠点でも不足がささやかれるなか、政府が責任をもって航空便で代替輸送する方略を講じ、それにかかる費用負担も保証することで、物理的に資材を早急に国内に取り込み確保することが、きわめて重要です。
