学生にとって定期代高騰は「死活問題」

本稿では、通学者の中でも相対的に移動距離の長い「大学生」に着目したい。24年11月に日本学生支援機構から公表されたデータによれば、22年時点の大学昼間部に占める自宅からの通学生は59.1%の模様だ。大学授業料の上昇傾向に伴い、下宿生の比率は低下傾向にある。人口が多く大学も集中している首都圏内出身者には、下宿費などの負担回避のため、通学時間を要してでも自宅から通学できる範囲内の首都圏の大学に進学を希望する保護者が多くなることだろう。

それでなくとも保護者の負担感は重いようで、大学生の収入に占める保護者などからの小遣いは減少傾向にあり、保護者が負担することも多い交通費を合算しても、24年が15年を下回る(図表3)。

【図表3】大学生の月額収支に占める交通費等[単位:年、円]
出典=全国大学生活協同組合連合会「第60回学生生活実態調査概要報告」を筆者加工

勤務者とは異なり、交通費補助制度のない大学生にとって、定期代の高騰は死活問題だ。1月30日に国土交通省鉄道局がまとめた運輸審議会用の説明資料にも、長距離通学する大学生への負担増に反発する声が相当数認められる。運賃改定後には負担増を嫌気して、近隣の進学先を選択する動きなど「乗車区間の短縮圧力」が働くことになろう。これは、長距離通学時のお供だった「駅ナカの売店やコンビニ」での買い物が減ることを意味する。塵も積もれば、閉店の遠因となる可能性も十分ある。

深刻な「ドミノ倒し」が起きる現場

そして、最も深刻なドミノ倒しが起きるのが「医療現場」である。26年2月1日現在の総人口に占める65歳以上の高齢者比率は29.39%だが、(列車に乗ることが日常化する)高校進学者以降の該当年齢である15歳以上に限った人口に占める65歳以上比率になると、33.01%となる。したがって、JR東日本の主要利用層も、三分の一は(ウ)高齢者と考えられる。

高齢者の外出動機として、まず連想されるのは通院だ。厚生労働省が25年9月に公表したデータからは、高齢世代に到達した後にも、加齢に伴って外来受診回数が増加する傾向が窺える(図表4)。

【図表4】年齢階層別1人当り年間外来受診回数[単位:歳、回]
出典=厚生労働省「医療保険に関する基礎資料 ~令和4年度の医療費等の状況~」を筆者加工

病院は、都市再生特別措置法上で都市の拠点となる都市機能誘導区域に立地を誘導すべき都市機能増進施設の1つに挙げられている。都市機能誘導区域に鉄道駅付近が指定されることが多いため、駅付近に病院が開設されることが多くなる。

この結果、病院最寄りの駅までJR東日本を乗車する高齢者も相当数に及んでいたところ、今般の運賃改定がもたらされた形だ。