自転車交通違反「青切符」の余波

これらの結果、二次交通利用者には、駅徒歩圏内への転居のほか、駅までの経路を自転車や徒歩などに切り替える動きがもたらされるだろう。総じて厳しい経営状況にある路線バス事業者にとって、通勤定期利用者は重要なリピーターだが、その利用者が減る逆風となる。減便の動きに直結することで、運行本数が減るなど利用者利便が低下する可能性を見込む。

一方で、自転車利用通勤者の増加は、駅最寄りの公設駐輪場などの抽選倍率を高める。駐輪場の定期利用が満車になれば、駅周辺に放置自転車が増え、生活利便性を低下させることにもなろう。

24年3月公表の「駅周辺における放置自転車等の実態調査の集計結果」では、東京都のJR新小岩駅や金町駅、千葉県の東金駅周辺などで多くの放置自転車が溢れている実情が報告されている。運賃改定後には、同様の現象が各地に広がることが懸念される。

追い打ちをかけるように、26年4月からは16歳以上の自転車交通違反への「青切符」制度が導入される。政府広報でも悪質・危険な違反の例として酒気帯び運転が挙げられているが、自動車の運転免許証を持つ違反者には、最長6カ月の免許停止処分を受ける可能性がある。「仕事で車を使う人間」にとっては一発アウトの死活問題だ。

割安な私鉄へ移行し、混雑率上昇の懸念

さらに恐ろしいのは、自転車で来店したと知りながら酒を提供した店側も罰則の対象となることだ。ベッドタウンの駅前には帰宅時の通勤客を見込んだ居酒屋が珍しくないが、通勤手段をバスなどから自転車に切り替える通勤者には「帰りは自転車だから飲めない」という判断が働く。SNSなどでも罰金増額に「怖すぎる」という声が広がっているためだ。よって自転車通勤層の比率が増えれば、酒類を出す店の売り上げが激減しかねない。運賃値上げが、回り回って駅前のネオンを消すことになるのだ。

(イ)通学者とその親にとっても、負担増のインパクトは計り知れない。例えば、JRの「新宿―八王子」間の6カ月通学定期は3万8780円だったところ、運賃改定後は1万円近く値上げされて4万8050円となる。このため、「新宿―京王八王子」間が2万4360円である京王電鉄が、検索広告の出稿などで割安をアピールしている。結果として、相当数が京王電鉄に移行する見込みのため、利用者には混雑率の上昇が懸念される。

JR東日本の運賃値上げの例
画像=共同通信社
JR東日本の運賃値上げの例