助成策は成田市の「交通系1万円」だけ
収入が年金などに限られる高齢者にとって、今回の運賃値上げは現役世代以上に重くのしかかる。高齢者の交通利用時には、路線バスやタクシー利用時に自治体などが助成を行う施策がみられる。その一方で、今回調査した限り、JR東日本の利用に直接的に助成する施策は見つからず、間接的な助成策でも成田市での運転免許返納者への返納時(一度)の交通系ICカード1万円相当の交付程度にとどまった。
2023年2月に全国保険医団体連合会が公表したデータによれば、75歳以上で医療機関を定期的に受診している人は97.4%に達する。そうした中、経済的理由による受診控えが医療費窓口負担2割対象者で16.8%(およそ6人に1人)、1割対象者で12.7%(およそ8人に1人)に達している。理由としては窓口負担増のほか相次ぐ年金引き下げ、物価高騰が挙げられているが、調査を実施した2022年平均の消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は102.1であったが、26年2月は111.4だ。暮らしぶりがより厳しくなっている年金生活者が増えていることが想像に難くない。
高齢者の「受診控え」が増える懸念
結果として何が起きるか。「これまで隔週で通院していたところを、3週間に1回に減らす」といった外来受診の絞り込み(受診控え)の増加である。
外来受診回数の減少は、病院側に再診料などの点数の算定機会を減らすことに直結する。25年12月の帝国データバンクの調査報告によれば、24年の病院の損益動向では、およそ6割が営業赤字の模様だ。のべ外来患者数の減少は、赤字傾向に拍車を掛けることになろう。
さらに、調剤薬局の収支にもマイナスの影響をもたらす。調剤技術料のうち調剤基本料は処方箋1枚につき1回だけ発生することになるため、1回の調剤時の投与日数が長くなれば、それだけ調剤基本料が受け取れなくなる。
別の切り口では、受診に交通費を要さないオンライン診療の利用比率も上昇するだろう。対面診療と交互に実施するローテーション形態などが普及する契機となる可能性もある。
