「どうすれば自分らしい仕事ができるか」は、誰にも切実な問いである。本書はその問いに正面から向き合う自己啓発書だが、私が専門とする地球科学研究の視点とも驚くほど共通する。単なる努力論に終わらず、「価値は環境で決まる」という冷静な方法論を軸に体系的に構成されている。

『「最高値で選ばれる自分」の作り方戦略』
『「最高値で選ばれる自分」の作り方戦略』松下公子 著 ぱる出版/1500円+税

タイトルの「最高値で選ばれる自分」となるには、まず「選ばれる理由」を掘り起こし、他人にも可視化されなければならない。たとえば、ダイヤモンドを思い浮かべてほしい。ダイヤモンドは炭素からできているが、炭素そのものは珍しくなく鉛筆の芯も木炭も同じ物質からなる。一方、ダイヤモンドが特別視されるのは、地球の深部200kmという特殊な環境で生まれ、火山の噴火で地上へもたらされる偶然を経て、人類に発見されたからだ。天然鉱物のダイヤモンドにはこうした「文脈」があり、最高値の自分とはこのダイヤモンド的な存在の作り方にほかならない。

著者はテレビ局のアナウンサーを経て、アナウンサー志望者を内定させるコーチとして起業し、現在はメディア発信の指導サポートを行っている。そのポイントは、自分の能力を無理に高めるより、どこで評価されるかを考えることにあると説く。同じ力を持つ人でも置かれる場所が違えば評価が大きく変わるからだ。

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