日本初の女性首相のもと、自民党が歴史的な勝利を収めるに至った2026年衆院選。その直後に「選挙を科学する」この本を手に取って、今回の選挙結果――自民大勝と旧立民の大敗、国民民主や維新の行方、参政党やれいわフィーバーの一定収束など――を予見するすべての要因が昨年の参院選までに萌芽のようにして出揃っていたことを確認し、いたく感心した。奥付には26年2月3日発行とあるが、解散総選挙をどこまで先読みしていたのか、タイムリーな出版スケジュールに脱帽だ。25年参院選後、チキラボによる選挙分析のオンラインセミナー開催に気づいて公開資料を読んでいた私だが、選挙データそれ自体を読む以前に自分の中にある「こうなってほしい」との期待や「こうあるべき」との思い込みが色眼鏡となり、その後、高市総裁が本当に誕生し、このように着地するとはまるで想像しえなかったことに反省がある。
24、25年の選挙はともに、SNSやユーチューブなどのニューメディアが新たな、かつ圧倒的な役割を果たすことによって、この国の未来が不安になるような悪質なプロパガンダが跋扈した。有権者のアンバランスな「推し活」が促進され、国政選のみならず地方選も撹乱され、その結果を「有権者の信任を得た」と歪めて解釈し、主張に利用する。「勝てば官軍」に近い選挙結果の解釈が世論と政局を暗に支配し影響を与え、不思議なネットスターをつくり出してオピニオンリーダーへと祭り上げる、そんな選挙が続いた。「民意解釈が都合よく独占、そして利用されないためには、丁寧かつ誠実な民意解釈が、市民セクターの側からおこなわれる必要があります」(まえがき 荻上チキ)。
過去の選挙から次の選挙に進んでいくために、政治学、データ分析、アメリカ政治、ジェンダー平等、SNSマーケティング、ジャーナリズム、哲学対話の専門家たちが、それぞれの視点から「あの選挙」を読み解く。
いずれにせよ自民圧勝だったわけだが、データをきちんと読めばこれもまた次の選挙を予見する材料の宝庫となる。
今回の一見拙速な選挙は、もしかして政治インフルエンサーの準備を削ぎ、SNSのノイズの発生を抑えることには成功したのかもしれない。社会は反省し、なんらかの進化をするはずだ。
第2章「並立制はどのように日本政治の混迷を深めたのか?」、および第3章「誰が野党を支持しているのか?」、第7章「参政党の『躍進』はなぜ起きたのか?」などが秀逸。自分とは異なる主義主張の人々の動きにも、彼らの正義に基づいたセオリーがあることに気づく。イデオロギーを廃した冷静なデータ分析は、「この選挙」を通して我々の社会の姿をクリアに描き出している。
かわさき・たまき●1973年、京都府生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。時事、カルチャー、政治経済、子育て・教育など多くの分野で執筆中。立教大学社会学部兼任講師。著書に『オタク中年女子のすすめ』『女子の生き様は顔に出る』(ともに小社刊)ほか。
※本稿は、雑誌『プレジデント』(2026年4月3日号)の一部を再編集したものです。
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