アペロという文化

フランスには「アペロ」という文化があります。仕事終わりに同僚と一杯飲むことです。

お酒と軽いおつまみを囲むこの時間は、単なる娯楽だけではなく、人脈形成の重要な場でもあります。リラックスした雰囲気の中で、本音の会話や重要な情報が自然に交わされます。

実際、私もアペロを通じてビジネス上のつながりが生まれた経験があります。

現状のプロジェクトが終わりに近づき、次のアサイン先のプロジェクトを探しているときのことです。

ちょうど、デジタル関連の新しいプロジェクトが立ち上がる予定があり、誰がプロジェクトメンバーになるのかまだ正式に決まってない頃でした。

アペロの場でプロジェクトマネージャーと偶然隣になり、雑談の中でプロジェクトの話題が出たのです。

私はその場で自分の関心や経験を軽く共有しただけでしたが、後日正式にプロジェクトメンバーとして声をかけてもらうことになりました。こういった思いがけないチャンスにアペロの場で出会うこともあるのです。

その他にも、上司の移動や予算変更、新しいチームメンバーの配置といった業務に影響する情報も、こうした場で早く入手できることがあります。

情報を早く得られれば、それだけ準備ができ、相手との協力関係も築きやすくなります。

また、形式ばらない場だからこそ、職場では見えない人柄や価値観を知ることができ、より親密な関係をつくることができます。

ランチ、コーヒーブレイク、アペロ――どれも小さな時間ですが、人脈を築き、信頼関係を深めるための重要な「投資」です。

忙しい日々の中でも、こうした時間を意識的に確保することで、今後のキャリアを支える強固なネットワークが育っていきます。

まずは「今ある人脈」を見直す

私が「人脈づくり」を意識的に始めたのは、INSEAD(※)での経験がきっかけでした。日本にいた頃は、人脈は自然と広がっていくものだと思い、自分から行動を起こすことはほとんどありませんでした。

しかし、INSEADに入学してから、その考え方は大きく変わりました。周囲の学生たちは、自分の将来を見据え、「誰と、どのようにつながるべきか」を明確に意識しながら、戦略的に行動していたのです。

では、まず何から始めるべきか。最初は「現状の棚卸し」です。つまり、自分がどんな人たちとすでにつながっているのかを、実際に紙に書き出してみるのです。会社の同僚、上司、クライアント、大学の仲間、昔の友人や恩師……。

書き出していくうちに、自分の周りに、助けてくれた人、刺激を与えてくれた人の存在があったことを、次第に思い出してきます。

次にしたのは、その人たちを整理することでした。たとえば、業界を横断して多くの人とつながる「コネクター」、特定の組織にアクセスを持つ「ゲートキーパー」、強い影響力を持つ「インフルエンサー」、特定の分野に関する専門知識を持つ「スペシャリスト」、困っている人を助け、励ましを与える「サポーター」……。

単なる「友人リスト」ではなく、それぞれが自分にとってどんな役割を果たせるのかを考えてみると、人脈の見え方が一気に変わります。

※フランス、シンガポール、アラブ首長国連邦にキャンパスを持つ世界トップクラスのビジネススクール